特定調停はデメリットが多い!専門家が勧めない理由と代わりの債務整理方法

債務整理の方法として主な3つの方法以外でよく紹介される特定調停ですが、専門家はまずお勧めしません。

専門家が関与しない方法であるためである以上に大きなデメリットがあるためです。

ではどのようなデメリットがあるのでしょうか。

このページでは特定調停とはどのような手続きか、特定調停にはどのようなデメリットがあるのか等についてお伝えします。

目次

1.特定調停とは

特定調停とはどのようなものなのでしょうか。

特定調停とは

特定調停とは、裁判所で行う調停のうち、債務の返済ができなくなるおそれのある債務者の経済的再生を図るために行われる調停のことをいいます。

調停とは、裁判所で、裁判官と民間から選任される調停委員からなる調停委員会が、当事者の主張を聞きながら、紛争を解決する手続きのことをいいます。

特定調停は、この調停という手続きを、借金返済ができなくなるおそれのある債務者が利用することで、借金返済を楽にするものです。

多くのケースで借金を元金のみの分割返済としてくれることになるので、同じく貸金業者と個別に交渉して元金の分割返済とする任意整理に近い効果があります。

特定調停は基本的には弁護士や司法書士に依頼せずに、自分で簡易裁判所に申し立てを行って手続きをするめるものですが、ごく稀に弁護士や司法書士が、貸金業者との交渉に難航した際に利用することもあります。

特定調停と債務整理の関係

債務整理とは、法律上認められている手段を利用して、借金返済を楽にしようとするものをいいます。

よく広告で、借金救済方法・借金減額方法などと表現されることもありますが、内容としては債務整理と同様です。

特定調停は、裁判所を利用して借金返済を楽にしようとするもので、債務整理の一つの手段にあるといえます。

特定調停と任意整理の関係

任意整理とは、貸金業者と交渉をして、借金返済を楽にしてもうようにする手続きのことをいい、債務整理の一つの方法に挙げられています。

特定調停と任意整理はともに債務整理の方法の一つであるという関係にあり、元金の分割払いとなる点が多いことで特定調停と任意整理は共通するといえるでしょう。

特定調停と自己破産の関係

自己破産は、破産法に基づいて、債務者の債務を免責してもらう手続きで、債務整理の一つの方法です。

特定調停と自己破産はともに、債務整理の方法の一つであるという関係にあります。

特定調停と個人再生の関係

個人再生は、民事再生法に基づいて、債務者の債務を減額してもらった上で、分割して払っていく手続きで、債務整理の一つの方法です。

特定調停と個人再生は、同じ様に債務整理の方法の一つであるという関係にあります。

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特定調停のデメリット

債務整理の一つの方法である特定調停ですが、利用することで次のようなデメリットがあるとされます。

ブラックリスト

デメリットの一つ目はブラックリストとなることです。

ブラックリストとは、個人の信用情報に特定調停の申し立てをされたことが記載され、以後信用情を利用して審査して行う取引ができなくなる状態をいいます。

信用情報とは、個人がいくら借り入れ等をしているか、その返済状況はどうなっているかなどの情報のことをいい、貸金業者から借金をする場合や、クレジットカードの申し込み、携帯電話を分割で購入する際に審査のために利用されます。

特定調停の申し立てをした場合には、その旨が貸金業者に伝わって信用情報を管理している信用情報機関で登録がされます。

借金やクレジットカードを作る・携帯電話の分割での購入ができなくなるなどで、生活に影響を及ぼすので、ブラックリストを避けたくて債務整理になかなか踏み切れない方も多いです。

しかし、いよいよ返済が滞った場合には、延滞したとして信用情報に登録されてブラックリストとなります。

ブラックリストは、返済が厳しい場合には、遅かれ早かれ避けては通れないといえるものです。

また、ブラックリストは永遠ではなく5年~7年程度と期間は限られており、また携帯電話の回線の契約は禁じられておらず、一括での購入やデビットカード・プリペイドカードの利用ができるので、全く生活できなくなるわけではないことを知っておいてください。

返済できる場合である必要がある

特定調停は返済をすることを前提とする手続きです。

調停で債務を免責してくれることはなく、少なくとも元金を分割で支払う必要はあります。

そのため、分割金額をきちんと返済できる場合でなければ特定調停の利用はできない点はデメリットでしょう。

返済するための収入がない・収入があったとしても生活をするのでやっとで返済に回す余裕がない場合には、特定調停を申し立てても返済の合意はできないと考えておきましょう。

手続きを自分で行う必要がある

特定調停のデメリットとして、手続きを自分で行う必要があることも挙げられます。

特定調停は、自分で裁判所に申し立てをするもので、弁護士・司法書士に依頼することを前提としていません。

そのため、手続きは自分で行う必要があります。

もっとも、自己破産や個人再生のような厳格な手続きではなく、自分で行うことも難しいものではありません。

調停委員が債務者に理解がない場合もある

調停には民間から選ばれる調停委員が加わります。

民間人なので、債務整理や債務者の状況に詳しくない人が居て、利息や遅延損害金などで不利な取り扱いをする人もいます。

そのため、必ずしも望むような結果が得られるとは限らないという注意点があります。

調停調書が作成されるので返済できなくなるとすぐ差し押さえられる

特定調停最大のデメリットが、調停調書が作成されるので、返済できなくなるとすぐに差し押さえがされることです。

特定調停が成立すると、新たな返済内容について、調停調書が作成されます。

この調停調書は、民事執行法22条7号で債務名義となるので、もし調停案の返済ができなかった場合には、すぐに強制執行ができることになります。

借金返済が厳しくなって差し押さえるものが乏しい場合でも、給与の1/4は差し押さえることができることになっています。

任意整理の返済ができなくなっているような場合には、裁判を起こされた上で強制執行となるので、時間的には余裕があり、その間に再度の債務整理を行う余裕があります。

ところが、特定調停の場合には、差し押さえによって生活がすぐに窮地に追い詰められることになるので、注意が必要です。

本当はどんな手続きが向いているか自分では判断が難しい

債務整理には特定調停のほかにも、任意整理・自己破産・個人再生といった方法があります。

借金の額と返済能力、家族の希望などをもとに、これらのいくつかある手続きの中から適切な手続きによって行う必要があります。

どのような手続きが向いているか一般人では判断が難しい上に、借金をしている本人には冷静な判断が難しく、楽観的な手続き選択をしがちです。

そのため特定調停を利用したことが原因で、返済がおぼつかなくなり住宅ローンを長期で滞納してしまい、個人再生の住宅資金特別条項が利用できなくなり、自宅を手放すことになる、というような事態に発展することもあります。

特定調停のメリット

一方で特定調停には次のようなメリットがあります。

債務の返済が楽になる

貸金業者から借金をしている・クレジットカードで分割返済・リボ払いを用いた場合、返済にあたって利息と一緒に行う必要があります。

特定調停によって、この利息の全部または一部をカットすることができる可能性があります。

また、返済が滞って遅延損害金が発生しているようなケースでは、遅延損害金の全部または一部をカットしてくれる可能性があります。

返済の大部分が利息に充てられているような場合には、以後は元金がどんどん減っていくので、借金完済には大きな効果があります。

連帯保証人・担保がある債務を避けることができる

連帯保証人がいる債務について債務整理を行うと、連帯保証人に対して請求されることになります。

また、自宅や自動車、分割やリボ払いで購入した物品が担保になっている借り入れについては、これらのものが競売にかけられたり、引き上げられることがあります。

自己破産や個人再生をすると、すべての債権者を対象として手続きを行うので、連帯保証人への請求や、担保への権利行使が避けられません。

特定調停の場合、連帯保証人がついている債務や、担保がついている債務は、従来通り返済を継続し、債務整理の対象としないことができます。

弁護士・司法書士に依頼する必要がない

弁護士・司法書士に債務整理を依頼する場合には、弁護士費用・司法書士費用が必要です。

これらの費用をかけずに手続きを行うことができます。

特定調停を専門家が勧めない理由

以上のような特定調停ですが、専門家は決して勧めません。

その理由は次の通りです。

必ず有利な内容の調停を行えるわけではない

デメリットのところでもお伝えしましたが、手続きに参加する調停委員が必ず専門知識をもっており、かつ債務者の状況に寄り添ってくれるわけではありません。

任意整理に比べると不利な内容の調停となることもあれば、借金や返済能力からするととても返済できない状況にもかかわらず調停が成立してしまうこともあります。

これで返済が滞ってしまうと、また債務整理をやり直すことになるので、特定調停を勧めず、最初から適切な内容の債務整理が推奨されます。

債務名義を取得することで給与を差し押さえられる

こちらもデメリットのところでお伝えしましたが、特定調停によって債権者は調停調書という債務名義を取得します。

これによって、返済が滞ると、すぐに差し押さえをすることができます。

そして、借金返済に困っているような場合、差し押さえの対象になるのはほとんどのケースで給与です。

ギリギリの生活をしている中で給与の1/4が差し押さえられた上で、会社にもそのことが知られてしまうことになります。

そのため、特定調停を利用することは推奨されていません。

お勧めの債務整理方法

では、どのような債務整理方法がお勧めなのでしょうか。

どの債務整理が適切かは人によって異なる

債務整理をするといっても、どのくらいの借金の額があり、いくら返済ができるのかによって、適切な手続きは異なります。

同じ借金の額でも、収入が多い人と少ない人では毎月の返済可能な金額が異なります。

また、同じ収入でも、独身の人と家族を扶養している人でも、毎月の返済可能な金額は異なります。

任意整理がお勧めの人

任意整理がお勧めとなるのは、連帯保証人がいる場合や、担保があるなどで、債務整理の対象としたくない債務がある場合や、債務の額がそれほど多くなく余裕をもって返済できる場合です。

よく挙げられるのが、奨学金の借り入れがある場合や、住宅ローンで住宅を購入した場合、自動車ローンで自動車を購入したような場合で自動車がなければ生活できない地域に住んでいる場合です。

個人再生では住宅ローンで購入した自宅を守ることができても、奨学金の借り入れがある場合にこれを外すことができません。

ところが、任意整理ならば奨学金と住宅ローンを外して、ほかの債務を債務整理できます。

もっともこれは、対象から外す債務は従来通りの支払いを続け、かつ任意整理をした債務の分割返済もできる場合でなければなりません。

自己破産がお勧めの人

任意整理での返済ができない場合には、基本的には自己破産がお勧めとなります。

任意整理では、元金額を36回~60回程度の分割で支払う合意を貸金業者と行います。

例えば総額で300万円の借金がある場合、36回分割だと毎月8万4千円程度の、60回分割だと毎月5万円程度の支払いをする必要があります。

もちろん計算上は支払い回数を伸ばせば、より少ない金額での支払いとすることもできるでしょう。

しかし、60回を超えるということは5年を超える分割をすることになり、債権者としてもきちんと支払われているか管理したり、返済がなかった場合の手続きなどに負担ですし、債務者もそのようなギリギリの生活を数年続けられない可能性が高いでしょう。

そのため、60回を超えるような交渉をすることはまず難しいです。

そのため、そもそも収入がない・返済する余裕がない場合のみならず、60回を超えるような分割回数となる場合には、任意整理ができません。

この場合には、自己破産をするための要件である支払不能の要件を満たすといえるため、自己破産をして借金を免除してもらうのが適切です。

個人再生がお勧めの人

任意整理での支払いが難しい場合には、基本的には自己破産をするのがお勧めです。

しかし自己破産では、手続き中は職業が制限されたり、自宅を保有していると競売されるなどで、職業や自宅を失うことになりかねません。

そのため、住宅ローンで購入した自宅を所持している場合や、自己破産によると職業制限となる職業についている場合で、任意整理での支払いができない場合には、個人再生がお勧めとなります。

まとめ

このページでは、特定調停を中心にお伝えしました。

特定調停は任意整理に近い借金減額の効果を、弁護士・司法書士に依頼しないで行える債務整理の方法です。

しかし、債務名義を取られていつでも強制執行ができる状態になったり、そもそも特定調停が適切なケースなのかの判断ができないなどのデメリットがあり、あまりお勧めできない手続きとなります。

どのような手続きが適切なのかを知る上でも、まずは弁護士・司法書士に相談するようにしましょう。

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この記事を書いた人

神奈川大学法学部法律学科卒
2007年旧司法試験短答式・行政書士試験合格
2007年より法律事務所で勤務債務整理事務に従事
2018年より法律系を中心に解説記事の執筆をはじめる
相続・FX・旅行やグルメなども得意分野

債務整理に従事した経験から弁護士・司法書士に依頼する人の不安をなくしたいと考えています。

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