個人再生にはどんなデメリットがある?利用が向いている2つのケースについて解説

債務整理にはいくつか手続きがあるのですが、その中の一つに個人再生という手続きがあります。

任意整理・自己破産に比べて活躍することが少ないのですが、よく「自宅を守れる」と説明されるように、住宅ローンで自宅を購入した人にとって個人再生は魅力のある手続きです。

では、その個人再生ですが、どんなデメリットがある手続きなのでしょうか。

このページでは、個人再生にはどんなデメリットがあるのかについてを中心にお伝えします。

目次

1.個人再生とは

個人再生とはどのような手続きなのでしょうか。

1-1.個人再生とは

個人再生とは、民事再生法という手続きに基づいて行われる手続きで、裁判所に申し立てて借金を減額してもらった上で分割して払う債務整理の手続きです。

債務の返済ができなくなるおそれがある場合に、債権・債務の調整をおこなう民事再生法という法律があります。

会社の経営が立ち行かなくなったときに経営再建のために利用される民事再生手続きというものをご存知の方もいるかもしれません。

この民事再生手続きには、個人が利用するために調整された章が設けられており、その章の適用を受けて個人が債務整理を行うことを個人再生と呼んでいます。

債務額に応じて、最大1/10まで債務を減額し、残った額を3年(36回分割)で支払うようにすることで、借金返済を楽にします。

1-2.個人再生と債務整理との関係

債務整理とは、法律などで認められている方法を使って、借金返済を楽にすること全般をいいます。

個人再生は、債務整理をするための方法の一つであるという関係にあります。

よく「借金減額方法」「借金救済方法」などと広告で紹介されているものは、よく中身を確認すると債務整理と同じことを紹介しているので注意してください。

1-3.個人再生と任意整理との関係

任意整理とは、債権者と交渉をして、和解契約等を結ぶことで従来の契約よりも楽な内容の契約に変更して、借金返済を楽にする、債務整理の一つの方法です。

個人再生とは、債務整理方法の一つであるという点と、返済を継続するものの、返済内容を楽にしてもうとう点で共通点があります。

一方で裁判所に申し立てをする点や、元金も含めた大幅な減額がある点で、任意整理とは異なります。

1-4.個人再生と自己破産との関係

自己破産は、破産法に基づく手続きで、裁判所に申し立てをして借金を免責してもらう手続きです。

個人再生と自己破産は、いずれも債務整理の方法の一つの種類であり、かつ法律の規定に基づいて裁判所に申し立てをして行う点で共通します。

しかし、個人再生は返済をする手続きである点で自己破産とは異なります。

2.個人再生のデメリット

債務整理の一つの方法である個人再生にはどのようなデメリットがあるのでしょうか。

2-1.ブラックリスト

個人再生のみならずどの債務整理を利用した場合にも発生するデメリットとして挙げられるのがブラックリストです。

ブラックリストとは、個人再生をしたことが信用情報に登録される結果、信用情報を使って審査をする取引で、審査に落とされることをいいます。

貸金業者から借金をする場合はもちろん、クレジットカードを作ったり、スマートフォン分割で購入することもできなくなります。

このブラックリストは大きなデメリットであり、ブラックリストとなることを嫌がって個人再生や債務整理に決心がつかない人も多いのです。

しかし、そのまま借金返済を続けて返済できなくなり延滞すると、これによってブラックリストとなってしまいます。

また、プリペイドカードやデビットカードを利用することでクレジットカードの代わりにできるなど、代わりに利用できるものがあります。

また、ブラックリストの期間も、個人再生の場合は7年程度と期間制限があります。

借金の返済が難しくなっているような場合には、いずれ避けては通れないといえるものであるといえるでしょう。

2-2.返済する資力が必要

個人再生は減額されるとはいえ、借金を返済する必要がある手続きです。

そのため、個人再生を利用するためには、返済する資力が必要で、収入がないような場合はもちろん、収入からはとても借金を返済できる余裕がないような場合にも利用することはできません。

同じように返済する資力が必要な任意整理に比べると、元金も減額される個人再生では、より少ない資力で手続きを行うことができます。

2-3.手続きが複雑である

個人再生は、民事再生法に定められた手続きに基づいて行われます。

裁判所への申し立てや、個人再生委員・裁判所での面接などが必要で、その内容は非常に複雑です。

そのため、債権者との交渉で返済の減額をしてもらう任意整理に比べると、弁護士に依頼する場合の費用も多くかかります。

2-4.官報に掲載される

自己破産と同じく、個人再生の手続きをするにあたって、官報という国が発行する機関紙において個人再生をしたことが公告されることになります。

官報は紙面として誰でも購入できるほか、インターネットでも閲覧が可能です。

ただし、官報は法律の公布や会社の会計決算の公告など、法律などで公にすることが義務とされているものに使うもので、日常的に誰かに読んでもらうことを前提としたものではありません。

そのため、官報に掲載されることをもって、第三者に個人再生をしているというプライバシーが明らかになってしまうことを心配する必要はありません。

2-5.連帯保証人に請求される

個人再生では、すべての債権者が手続きに参加することになります。

そのため、借り入れをする際に保証人を立てている債務がある場合、連帯保証人に対して請求されることになります。

なお、連帯保証人が住宅ローンの連帯保証人で、住宅資金特別条項を利用する場合には請求されません。

2-6.担保に入っているものが引き上げられる可能性がある

自動車や住宅、ブランド品・貴金属・電化製品を購入する場合、契約携帯によって購入した物が担保に入っていることがあり、返済できなかった場合には担保として引き上げられてしまう可能性があります。

なお、住宅を住宅ローンで購入した場合には、住宅資金特別条項を利用することで、住宅を手放さずに手続きを行うことができます。

3.個人再生のメリット

一方で、個人再生を利用すると次のようなメリットがあります。

3-1.借金を減額してもらうことができる

まず、借金を減額してもらい、分割返済とすることができます。

同じ用に分割して返済するものとして任意整理が挙げられますが、任意整理は元金を分割で返済することになるので、毎月返済しなければいけない額が多いです。

一方で個人再生の場合は、元金も含めて債務を最大1/10に減額してもらうことができます。

実際に適用されることが多いのが、借金100万円~500万円の範囲である場合には、借金を100万円に減額でき、これを36回の分割にする際には、おおよそ毎月2万8千円の返済ができれば利用が可能となります。

借金の元金が200万円ある場合、任意整理だと5万6千円(36回分割)程度が必要なので、毎月の返済額額をぐっと下げて分割返済とできることになります。

3-2.住宅を維持して債務整理ができる可能性がある

個人再生を利用する場合の最大のメリットは、住宅を維持して債務整理ができる可能性があることです。

住宅ローンで住宅を購入した場合に、住宅資金特別条項を利用すれば、住宅ローンをそのまま返済をつづけ、住宅ローン以外の債務を減額の上分割で返済することができます。

住宅ローンで自宅を購入する場合、購入した住宅ローンには抵当権という担保がつけられており、債務整理をする場合で住宅ローン債権者も対象となる場合は自宅を失うことになります。

そのため、任意整理で住宅ローン債権者を外して任意整理を行うことが考えられるのですが、任意整理をしても債務の返済が厳しい場合任意整理は利用できず、自己破産をすることが考えられます。

当然自己破産では住宅ローン債権者も対象となるので住宅を失うことになるのですが、個人再生の住宅資金特別条項によって、任意整理ができない場合でも、住宅を維持して債務整理をすることができます。

3-3.自己破産のような職業制限にかからない

自己破産をする場合、一定の資格に基づいて仕事をしている場合には、自己破産手続き期間中その職業が制限されることがあります。

典型的な例としては、警備員・宅建業・保険募集人などが挙げられます。

これらの人が任意整理をできない場合、自己破産となると仕事を失ってしまう可能性が高いので、これを回避するために個人再生を使うことが可能です。

3-4.自己破産のように資産を失わない

自己破産では、持っている資産のうち、一定の要件の資産がお金に換えられて、管財人の報酬や債権者への配当に当てられます。

個人再生では資産の換価をせずに返済をするため、自己破産のように資産を失わずにすみます。

4.個人再生の注意点

個人再生をする場合には次のような注意点があります。

4-1.住宅資金特別条項には条件がある

まず、住宅資金特別条項は住宅ローンで自宅を購入した場合のものなので、自宅を担保にお金を借りる不動産担保ローンの場合には利用することができません。

これは、住宅ローンで自宅を購入して、完済する前に住宅を担保に不動産担保ローンをしたような場合も当てはまります。

また、住宅ローンの支払ができなくなっていて、保証会社が代位弁済をしているようなケースでは、代位弁済をしてから6ヶ月以内に個人再生を申し立てている必要があります。

また、住宅資金特別条項のときには、オーバーローンである場合が基本で、アンダーローンである場合には注意が必要です。

オーバーローンとはローンの金額の方が担保の価値よりも多い場合で、アンダーローンとは逆に担保の価値のほうがローンの金額よりも多い場合です。

例えば、住宅を売却した場合の価値が1,000万円である場合、ローンが1,500万円残っている場合はオーバーローン、ローンが500万円となっている場合はアンダーローンとなります。

オーバーローンであれば特に考慮をすることなく住宅資金特別条項つきの個人再生ができますが、アンダーローンとなっている場合には、ローンと担保の価値を差し引きした金額分資産があると認定されて個人再生を行います。

そのため、上記の例では500万円の資産を持っている状態で個人再生をすることになり、個人再生における返済金額の計算に大きく影響することがあります。

4-2.減額されない債権もある

税金や罰金・養育費のように、自己破産で免責されない債権については、個人再生でも減額されません。

離婚後に養育費の支払いができていない場合、過去の未払いの養育費については金銭債権となっているので減額の対象となるのですが、まだ期限が到来していない養育費の支払い義務は残っているので注意をしましょう。

4-3.個人再生を利用するのが向いている人

個人再生を利用するのが向いている人は主に次の2種類です。

  • 任意整理で支払うことができない場合で住宅ローンで購入した自宅を維持したい
  • 任意整理で支払うことができない場合で自己破産による資格制限の影響を受ける

まず、住宅ローンの借り入れがあり自宅を維持したい場合、任意整理か個人再生を検討することになります。

任意整理では減額を交渉する相手を選ぶことが可能ですので、住宅ローン債権者を外して債務整理をすることが可能です。

しかし、外した住宅ローン債権者への返済は従来通りする必要があり、その上で任意整理をした他の債権者への返済もきちんと行う必要があります。

住宅ローン債権者以外の借り入れ額も多く、元金の分割返済ができない・難しい場合には、個人再生を検討することになります。

また、住宅ローンで自宅を購入した場合ではなくても、自己破産によって職業制限にかかる場合で、その職業を続けたい場合には、個人再生を利用することが向いています。

5.まとめ

このページでは、個人再生のデメリットについてお伝えしました。

個人再生は、住宅ローンで住宅を購入した場合で住宅を維持したいような場合や、自己破産では職業制限にかかるような場合に利用することが多い債務整理の方法です。

自宅を守って債務整理をしたいような場合、状況に応じた適切な債務整理方法を行う必要があります。

借金の額が多くなりすぎたり、延滞の期間が長くなると、自宅を守っての債務整理は非常に困難となります。

そのため、個人再生の利用を考えるようなケースでは、早めに弁護士・司法書士に債務整理の相談をするように心がけましょう。

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この記事を書いた人

神奈川大学法学部法律学科卒
2007年旧司法試験短答式・行政書士試験合格
2007年より法律事務所で勤務債務整理事務に従事
2018年より法律系を中心に解説記事の執筆をはじめる
相続・FX・旅行やグルメなども得意分野

債務整理に従事した経験から弁護士・司法書士に依頼する人の不安をなくしたいと考えています。

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