任意整理にはどんなデメリットが?家族や会社にバレたり影響しない?

債務整理の主な方法のうち、任意整理は裁判所での手続きを経ないで済む・連帯保証人に迷惑をかけない、などの点で利用を希望する人も多いです。

しかし、任意整理自体にもデメリットがあるので、デメリットに注意をして手続きを行う必要があります。

このページでは、任意整理のデメリットを中心にお伝えします。

目次

任意整理とは

任意整理とはどのような手続きか、他の債務整理の方法との関係と併せて確認しましょう。

任意整理とは

任意整理とは、債権者と交渉を行い、支払い内容を軽減してもらう債務整理の手続きです。
貸金業者からお金を借りる場合、借りたお金に利息をつけて返済することになり、返済が遅れれば遅延損害金をつけて返済をする必要があります。

任意整理では、貸金業者と交渉を行って、従来の契約内容での支払いから、より返済内容の軽減をしてもらいます。
現在の実務では、毎月返済時に支払っている利息をカットしてもらうことができ、毎月元金のみを返済すれば良いことになります。
また、返済が遅れて遅延損害金が発生している場合には、遅延損害金の全部又は一部をカットしてもらうことができます。

なお、長期間借り入れをしていた場合には、過払い金が発生していることもあります。

この場合、元金が大幅に減額されたり、場合によってはお金を返してもらうことも可能となります。
任意整理をするためには、貸金業者が条件を緩和することに合意をしていて、緩和した条件で返済をすることができる場合でなければなりません。
そのため、収入がなく返済ができないような場合には、利用することができません。

任意整理と債務整理との関係

任意整理は債務整理という言葉とはどのような関係にあるのでしょうか。
債務整理という言い方は、任意整理・自己破産・個人再生などによって、借金の返済を楽にすることをいい、手続き全般を指します。
任意整理との関係でいえば、任意整理は債務整理をするためのいくつかある手続きの一つであるといえます。

任意整理と自己破産との関係

自己破産とは、破産法に基づく手続きで、裁判所に申立てをして借金や債務を免除してもらう手続きです。
任意整理と自己破産は、いずれも債務整理方法の種類であるという関係にあります。
債務整理をする場合、その人の借金額・収入などに併せて適切な手続きを選択します。

任意整理は債務を返済することが必要な手続きで、収入がないか収入があっても生活するための費用にかかってしまい返済にまでは回せないこともあります。
このような場合には、任意整理は利用できず、自己破産を利用することになります。

任意整理と個人再生との関係

個人再生とは、民事再生法に基づく手続きで、裁判所に申立てをして、借金を減額してもらい分割して返済する手続きです。
個人再生も任意整理と同様に、債務整理の手段の一つであるという点で、かつ返済を軽減してもらう手続きである点で共通点があります。
ただ、個人再生は裁判所に申し立てて行うことや、元金も含めて減額をしてもらうものなので、任意整理よりも借金の返済が大幅に楽になります。

任意整理にはどんなデメリットが?

借金の利息をカットしてもらい元金のみ返済とすることができるので、借金返済が楽になるのですが、その反面次のようなデメリットがあります。

ブラックリスト

債務整理の主な3つの手続きに共通してデメリットとなるものですが、ブラックリストが挙げられます。

ブラックリストとは、信用情報を使って審査をする取引ができなくなる状態のことをいいます。
ブラックリストになると、貸金業者からの借金、クレジットカードの作成・更新、携帯電話の分割購入などの取引ができなくなるなど、生活に大きな影響が出ます。
ただ、ブラックリストとなったとしても、携帯電話や自動車を一括で購入することはできますし、クレジットカードがなくてもデビットカードやプリペイドカードなど先に入金すれば利用できる決済システムを使えますし、携帯電話の回線を契約することは可能です。

また、ブラックリストの時期も、任意整理であれば5年程度と限られています。
さらに、ブラックリストが嫌だからと返済が苦しい状態を続けてしまい、延滞したときには、任意整理をした場合と同様にブラックリストとなります。
そのため、避けては通れないといえるでしょう。

他の債務整理よりも債務が減らない

自己破産・個人再生と比べた場合のデメリットなのですが、他の債務整理よりも債務が減らないというデメリットが挙げられます。
借金の免除がされる自己破産や、借金が大幅に減額される個人再生と異なり、任意整理は将来の利息と遅延損害金のカットにとどまります。
そのため、他の債務整理方法よりも債務が減らないので、一番返済能力を求められるといえます。

連帯保証人に迷惑をかける可能性がある

借金をするにあたって連帯保証人がいる場合、債務の返済に問題があると連帯保証人に請求されることになります。
連帯保証人がいる債務を任意整理の対象にした場合、連帯保証人に迷惑をかける可能性があります。
ただし、任意整理は債権者と個別に交渉を行う手続きで、連帯保証人がいる債務の場合には任意整理の対処としないことも可能です。
その場合、連帯保証人がいる債務については従来どおり支払う必要があります。

分割で購入したものを引き上げられる可能性がある

分割で購入したものがある場合、その物を引き上げられる可能性があります。
住宅や自動車をローンで購入した場合や、貴金属・ブランド品をカードで分割で購入した場合には、その物が担保に入っていることが多いです。
担保に入っているものがある債務について債務整理をすると、担保に入っている物を引き上げられたり、競売にかけられることになり、手元に保持することができません。
ただし、任意整理は上述したように、任意整理の対象から外すこともできます。

貸金業者が協力しないこともある

任意整理は、貸金業者との合意によって行われる手続きですので、貸金業者が合意しなければ成立しません。
ほとんどの貸金業者が任意整理に協力してくれるのですが、ごく少数の貸金業者が任意整理に協力しないことがあります。
また、借り入れをしてからほとんど返済していないケースのように、貸金業者が十分に利益を得られていないようなケースでは、任意整理に協力しないこともあります。
このような場合には、その債権者は任意整理の対象から外す、他の手続きの利用を検討する、など特別な対策を検討する必要があります。

任意整理のメリット

上記のようなデメリットがあるものの、任意整理には次のようなメリットがあります。

利息をカットしての分割払いにしてももらえる

借金が多額になってくると、返済のほとんどが利息であるということも珍しくありません。
利息をカットしてもらうだけでも借金返済が非常に楽になります。

遅延損害金を一部・全部カットしてもらえる可能性がある

返済が遅れると遅延損害金が発生します。
遅延損害金についても基本的にはカットしてもらえます。
ただし、返済できなくなって多額の遅延損害金が発生しているようなケースでは、遅延損害金の全部または一部を認めなければ任意整理ができないケースもあります。

債権者を選ぶことができる

裁判所での手続きを行う自己破産・個人再生では、債権者を平等に扱うために、連帯保証人がいる債務や担保がついている債務についても手続きの対象になります。
その結果、連帯保証人に迷惑がかかったり、担保となっているものが引き上げられる・競売にかけられるのは前述した通りです。
任意整理は債権者と個別に交渉をする手続きなので、債権者を選ぶことが可能です。
そのため、連帯保証人がいる・担保となっているものがある債権者を除いて手続きを行うことが可能です。

手続き的負担が少ないので弁護士費用も安い

自己破産・個人再生は裁判所に申し立てを行う手続きで、申立書の作成、裁判所・管財人とやりとりをする必要があるなど、手続き的な負担が大きいです。
任意整理は貸金業者と交渉するだけで、申立書のような書類を作成する必要はありません。
そのため、手続き的な負担が少なく、その分弁護士費用が安いです。

任意整理は家族や会社にバレる?

任意整理のような借金問題についてできれば会社には内緒で行いたい人も多いでしょう。
では、任意整理は家族や会社にバレるのでしょうか。

任意整理が家族にバレるか?

まず、任意整理が家族にバレる可能性は0ではありません。
弁護士が本人に対して送った書面を家族が開けてしまい、中身を見られることで家族に任意整理をしていることがバレることがあります。
もっとも、弁護士の事務所の封筒で、弁護士本人名で記載された手紙が突然送ってこられた場合、家族もびっくりして中を開けることが想定されます。
そのため、弁護士からの郵送物であることがわからないように、白や茶色の何も印字されていない封筒を利用して、弁護士であることを伏せて個人名で送ってくれるなどの対応をしてくれます。

それ以外では、貸金業者から訴訟を起こされた場合に、自宅に裁判所からの郵送物が送られてくるので、借金がバレるということもあります。
ただ、自己破産裁判所に対して報告するために、例えば共働きの配偶者の給与明細を出さなければならないなど、手続きの負担からバレる可能性などがあります。
任意整理では、配偶者の給与明細など、家族に資料提出をお願いするようなことはありません。
そのため、任意整理は債務整理の中で最も家族にバレづらいものであるといえます。

任意整理が会社にバレるか?

任意整理をしたからといって、会社に報告しなければならない、会社に何かを通知されるということは基本的にはありません。
ただし、会社からお金を借りていた場合で、会社相手に任意整理をする場合には当然ですがバレます。

会社が提携している貸金業者からの借り入れを任意整理した場合や、会社が提携しているクレジットカードの会社と任意整理した場合も同様です。
ただし、会社からの借り入れや、会社が連携している貸金業者からの借り入れも任意整理の対象から外すことが可能なので、任意整理をしなければ会社にバレることはありません。

また、裁判を起こされて給与が差し押さえられると、会社に給与が差し押さえられた通知が送られます。
この場合、会社にバレます。
裁判を起こされる前に任意整理を始めることで回避することができます。
これらの事態に陥るのは稀なことなので、基本的には会社にバレることは無いといえます。

任意整理をしたことは家族に影響しない?

任意整理をしたとしても、任意整理の効果は本人と貸金業者でのみ発生します。
そのため、同じ会社から家族が借り入れをしているような場合でも、影響することはありません。

また、任意整理をすることで、借り入れやクレジットカードの作成ができなくなるブラックリストになります。
ブラックリストとなる範囲もあくまで本人のみで、たとえ家族であっても道連れでブラックリストになることはありません。

ただし、自分が契約している家族カードを家族が利用しているような場合、その家族カードを任意整理すると、家族カードは利用できなくなります。

任意整理のQ&A

任意整理でよくあるQ&Aには次のようなものがあります。

任意整理がお勧めの人

任意整理がお勧めの人としては、きちんと返済する資力があり、自己破産や個人再生で影響が多い人が挙げられます。
きちんと返済する資力が無いような場合、任意整理を無理やり行うと、途中で返済できなくなってしまって、返済が滞って再度債務整理をする必要に迫られます。
そのため、返済する資力があることが大前提です。
その上で、自己破産や個人再生をすると影響が多い場合には、任意整理をするのがお勧めです。
例えば、自己破産をすると資格制限がある、連帯保証人には絶対に迷惑をかけられない、住宅を持っていて住宅を失いたくない、といった場合がこれにあたります。

任意整理がお勧めではない人

任意整理がお勧めではないのは、返済する資力がない場合や、自己破産・個人再生で特に影響がないような場合です。
上述したように、任意整理をすると元金を分割で支払わなければなりませんので、返済ができないと任意整理後に返済が滞り、再度弁護士・司法書士に依頼して、債務整理をする必要があります。
また、自己破産・個人再生が利用でき、手続きによって特に影響がない場合、任意整理はお勧めではありません。
よくあるのが、自己破産という響きが嫌で、なんとか任意整理で支払いたい、という場合です。
任意整理は元金を3年程度の長期にわたって返済する必要があります。
自己破産をすれば返済をする必要がないため、直ちに借金から生活を立て直すことが可能です。
とくに自己破産で職業制限がある・自宅を失いたくないような場合を除き、自己破産・個人再生を利用できる要件を満たしているのであれば、無理に任意整理で支払うのではなく、自己破産や個人再生で早く借金から解放されるほうが良いでしょう。

任意整理をするタイミング

任意整理は、元金を分割して支払う手続きであり、あまりに元金が多くなると毎月分割して払う金額も多くなります。
一方で自己破産・個人再生は手続きを利用するのに支払不能という状態になっていなければできませんが、任意整理はこのような条件がありません。
そのため、任意整理は手続きに着手するのが早ければ早いほうが望ましいといえます。
借金返済について、苦しい・なかなか減らないなど、少しでも辛いと思ったときには、なるべくはやく任意整理をするようにしましょう。

まとめ

任意整理は債務整理の中でも債権者と交渉して行うという特性があり、手続きが簡易で、債権者を選べるなどの特徴があります。
そのため、もっとも減額されない手続きであるというデメリットがあります。
また、どの債務整理手続きにも共通する、ブラックリストというデメリットも見逃せません。
デメリットが気になる場合にはまず弁護士に相談し、本当に自分の生活にデメリットとなるのか、他の手続きのほうが向いているのではないか、を確認してみることをお勧めします。

よかったらシェアしてね!
  • URLをコピーしました!
  • URLをコピーしました!

この記事を書いた人

神奈川大学法学部法律学科卒
2007年旧司法試験短答式・行政書士試験合格
2007年より法律事務所で勤務債務整理事務に従事
2018年より法律系を中心に解説記事の執筆をはじめる
相続・FX・旅行やグルメなども得意分野

債務整理に従事した経験から弁護士・司法書士に依頼する人の不安をなくしたいと考えています。

目次