債務整理にはどんなデメリットがある?手続きごとに解説

借金返済ができなくなってしまったときに、テレビやインターネット広告でよく見る債務整理を検討したいという方も多いのではないでしょうか。

しかし、債務整理にはデメリットもあるとよく伝えられており、自分の生活にどのような影響があるかも気になります。

そこで、このページでは債務整理にはどんなデメリットがあるのか、債務整理の具体的な手続きごとに解説します。

目次

債務整理とは

債務整理とはどのような手続きなのでしょうか。

債務整理とは

債務整理とは、借金の返済ができなくなったときに、返済が楽になるように、交渉や法的手続きをするものです。

貸金業者も契約通りの返済ができなくなった場合に、交渉をすれば返済内容を軽減してくれることがあります。

また、借金返済ができなくなった場合に備えて、破産法や民事再生法といった、経済的に立て直すための法律が用意されています。

これらの交渉や法律の手続きを利用して、借金問題を解決することを債務整理と呼んでいます。

債務整理というのは元々は弁護士や司法書士の業務分野に関する用語なので、わかりやすく言い換えた「借金救済」などと紹介されることもあります。

債務整理の3つの手続き

債務整理は、個々の具体的な手続きをまとめて呼ばれるもので、具体的な手続きには主に次の3つがあります。

貸金業者と交渉して借金返済を楽にしてもらう:任意整理

借金をしている貸金業者と交渉して、借金返済を楽にしてもらう債務整理の方法のことを任意整理と呼んでいます。

後述する自己破産・個人再生は法律の適用によって強制的に借金を免除・減額するものであるのに対して任意に借金を整理するものであることから、このように呼ばれています。

債権者との交渉なのですが、任意整理という実務の蓄積によって、貸金業者との任意整理については、将来の利息をつけないで元金のみを3年~5年で分割して返済するという形で借金返済を軽減してもらえます。

借金の額が増えると最も大変になるのが利息の支払いですが、任意整理によって利息の支払いがなくなるので、借金を完済するのが容易になります。

裁判所に申立てをして借金を免除してもらう:自己破産

裁判所に申立てをして、借金など返済すべき債務を免除してもらう債務整理の方法のことを自己破産と呼んでいます。

怪我や病気で仕事ができなくなってしまった場合や、収入がある場合でも収入に比してあまりにも借金・債務が増えすぎた場合に、生活を立て直すために債務の免除を認める必要があります。

そのため、破産法という法律が規定されており、破産法に基づいて厳格な手続きのもとに、借金の免除が認められています。

裁判所に申立てをして借金を減額してもらう:個人再生

裁判所に申立てをして、借金など返済すべき債務を減額してもらった上で、分割して支払っていく債務整理方法を個人再生といいます。

自己破産と同じように生活を立て直すために、債務の減額を認める債務整理方法です。

かつて和議法という法律による借金減額を認めていたのですが、現在の社会情勢にあわせて制定された民事再生法という法律において、個人が利用するための章が規定されており、これによって借金減額をする手続きが個人再生となります。

その他

主な債務整理方法は上記の3つですが、弁護士・司法書士に依頼せずに個人で裁判所に申立てをする特定調停があります。

また、借金返済ができずに長期間経過している場合に利用できる時効の援用、借金を相続した場合の対応方法である相続放棄・特定調停など、限られたケースで利用できるものもあります。

過去に利息制限法以上の借り入れをしていたような場合には、過払い金請求によって払いすぎていた利息と元本を相殺したり、返してもらうことも可能です。

債務整理をするとこんなデメリットが?

借金返済を楽にしてくれる債務整理ですが、当然デメリットもあります。

債務整理のどの手続を利用しても発生するデメリット

債務整理のどの手続を利用しても発生するデメリットとして、ブラックリストが挙げられます。

ブラックリストとは、信用情報に債務整理をした旨の情報が登録され、以後一定期間信用情報を利用した取引ができなくなることをいいます。

貸金業者等が個人がどれくらいの額のお金を借りているのかを把握するための情報に、信用情報というものがあります。

現在ある借金やショッピング残高、返済履歴などが記録されており、借金をする際や信販会社と契約をしてクレジットカードを作る際の審査に利用されます。

債務整理をした情報が貸金業者に伝わると、この信用情報に債務整理をした旨が登録されることになり、以後信用情報を使って審査をする取引が非常に難しくなります。

ブラックリストとはこのような、信用情報に債務整理をした旨の情報が登録されていて、審査が厳しくなる状態のことを言っています。

リストという語感から、特別なリストで管理されているように思う方もいるかもしれませんが、特別なリストやデータベースで管理しているわけではありません。

借金返済が難しくなっているようなケースでは、返済した後にできる借り入れ枠の限度で借金を繰り返す方も多いのですが、このような借り入れもできなくなります。

ただし、いずれ借金返済ができなくり、延滞すると同じようにブラックリストとなるので借金返済が厳しい状況だと避けては通れないといえます。

また、各種決済などにはデビットカードやプリペイドカードなどが利用でき、不便ではあるものの生活ができなくなるというわけではありません。

任意整理のデメリット

任意整理のデメリットには次のようなものがあります。

元金の減額は基本的にできない

債務整理の一つの方法である任意整理は、分割とはいえ基本的には元金の支払いはしなければなりません。

そのため、借金が免責される自己破産・元金も含め減額してもらえる個人再生に比べれば、返済すべき借金が多いのはデメリットの一つであるといえるでしょう。

返済ができない場合には利用できない

任意整理は元金を返済する手続きなので、そもそも返済ができないケースでは利用できません。

そのため、収入がない、収入があっても返済のために回す余裕がない場合は利用できません。

また、例えば借金が200万円ある場合で、毎月返済に回せるお金が1万円程度であるとしましょう。

200回の分割であれば理論上は返済可能ですが、16年以上にも分けて返済をするのは債権者としても債権管理のコストがかかるため、このような交渉をしても断られます。

おおむね3年~5年で返済できる程度の返済ができる場合でなければ、任意整理は利用できない点がデメリットです。

自己破産のデメリット

自己破産のデメリットには次のようなものがあります。

手続きが厳格である

自己破産は裁判所に申し立てをする手続きです。

そして、借金を免除してもらうという強力な効果があるので、手続きは厳格に行われます。

破産申立書等を作成し、その内容を裏付ける添付資料を提出、その上で裁判所に出頭して裁判所や裁判所から選任される管財人と協議を行うなどの必要があります。

様々な制限がある

自己破産は厳格な手続きで行われる関係上、手続き期間中は様々な制限を受けます。

例えば、破産手続き中は警備員・宅建業・保険業などの一定の職業に就けないという職業制限や、住居の移転(宿泊を伴う出張もこれに含む)に裁判所の許可が必要となる、などが挙げられます。

警備員をしていて、破産手続きで職業を失う可能性があるような場合には、自己破産による借金免除ではなく、個人再生による借金減額によって債務整理をするなどの工夫が必要となります。

官報に公告される

自己破産をすると官報という国が発行しているものに掲載(公告)されます。

官報とは、法律で公にすることが必要とされる事項を掲載したもので、新聞のような形式で発行されるほか、インターネットでも掲載されます。

自己破産では、自己破産をした人に対して本当に債務を有している人がいないかを探すために、官報による公告がされます。

氏名や住所が自己破産手続きを行うことと一緒に公になることは、プライバシーの観点からは大きなデメリットのようにも思えます。

しかし、官報を目にする機会は非常に少なく、官報が原因でプライバシーが明らかになる心配をする必要はありません。

連帯保証人に迷惑をかける

連帯保証人をつけて借り入れをしている場合に、自己破産をする場合には、連帯保証人に迷惑をかけます。

自己破産手続きはすべての債権者を平等に扱う手続きなので、連帯保証人がついている債務のみ外して手続きを行ったり、先に連帯保証人に支払ってしまうということができません。

そのため、債権者は連帯保証人に請求することになり、連帯保証人には迷惑をかけてしまう結果となります。

自宅など担保に入っているものを維持できない

自宅など担保に入っているものを維持できません。

住宅ローンで住宅を購入した場合、住宅には抵当権という担保が設定されています。

また、ショッピングローンをした場合には、ショッピングローンで購入した物が担保になっている場合があります。

自己破産をすると、住宅ローンやショッピングローンも対象となります。

その結果住宅については抵当権を実行されるので住宅を維持できませんし、ショッピングローンで購入した物はお金に変えられるようなもの(ブランド品・貴金属・電化製品など)は引き上げられることになります。

一定の財産は換価の対象となる

自己破産は持っている資産をお金に替えた上で(換価)、債権者に平等に配当をした後に免責してもらいます。

そのため、一定の財産は換価の対象となります。

不動産や貴金属・ブランド品などは換価の対象となりますが、生活に必要なものや、99万円までの現金は生活再建のために手元に残しておくことが可能です。

個人再生のデメリット

個人再生には次のようなデメリットがあります。

返済できない場合には利用ができない

個人再生は任意整理と同じく債権者に対する返済をする手続きです。

そのため、返済できない場合には利用ができません。

もっとも、任意整理では元金の支払いが必要ですが、個人再生では元金も減額されるので、任意整理よりも支払える額が少ない場合でも利用が可能です。

手続きが厳格である

個人再生も自己破産と同じく裁判所に申し立てをして、本来支払うべき借金を減額してもらいます。そのため、同様に手続きが厳格です。

債務の連帯保証人に迷惑をかける

個人再生も自己破産と同様に、すべての債権者を対象に手続きを行います。

そのため、連帯保証人に迷惑をかけることになります。

もっとも、住宅ローンは別の取り扱いをすることができるので、住宅ローンに連帯保証人がいる場合には、迷惑をかけずに済む可能性があります。

担保になっているものを維持できない

担保になっているものを維持できないのも、自己破産と同様です。

もっとも、住宅ローンは別の取り扱いをすることができるので、住宅を維持できる可能性があります。

官報に公告される

個人再生も自己破産と同じく官報で公告されます。

一方で債務整理には次のようなメリットも

ここまでデメリットを中心にお伝えしましたが、債務整理をすれば次のようなメリットが挙げられます。

債務整理全般のメリット

どの債務整理手続きを利用しても、借金から早期に解放され、経済的な再生ができます。

任意整理のメリット

任意整理のメリットは、自己破産・個人再生とは異なり、債権者と個別に交渉することから、連帯保証人がいる債務・担保がある債務については、従来通り返済して他の債務のみ返済することが可能です。

自己破産・個人再生のように、連帯保証人に迷惑をかけずに、担保となっている物を維持して債務整理が可能であるというメリットがあります。

自己破産のメリット

自己破産のメリットは、借金が免除されることです。

任意整理・個人再生ともに、返済をする手続きなのですが、自己破産は債務を免責してもらえるので、手続きが終わればすぐに借金から解放されます。

なお、税金・養育費など一部の債務については免責されないので注意が必要です。

個人再生のメリット

個人再生のメリットには次のようなものがあります。

借金が大幅に減額される

借金が大幅に減額されるというメリットがあります。

自己破産のように全額免除されるわけではないのですが、任意整理のように元金の返済をするよりも、より多くの減額を受けられます。

任意整理では返済ができない場合でも、個人再生であれば返済できる可能性があります。

自己破産のデメリットを回避できる

自己破産をする上でのデメリットである、職業の制限と自宅を失うというデメリットを回避できる可能性があります。

まず、上述したように、自己破産では職業制限を受けるというデメリットがあります。

しかし、個人再生は自己破産ではないので職業制限を受けません。

また、個人再生では住宅ローンについて特別な手続きをすることにより、要件を満たせば住宅を維持できます。

そのため、住宅ローンで自宅を手に入れていた場合に、個人再生であれば自宅を維持できる可能性があります。

債務整理を弁護士・司法書士に依頼するメリット

債務整理を弁護士・司法書士に依頼するのが通常です。

弁護士・司法書士に債務整理を依頼するメリットについては次の3つが挙げられます。

法的にサポートしてくれる

自己破産・個人再生をする場合には、法律に則って裁判所に申し立てをする必要があります。

また、任意整理をする場合には、貸金業者との交渉が不可欠です。

弁護士・司法書士に依頼すれば、法的なサポートを受けることができます。

法律上督促が止まる仕組みになっている

弁護士・司法書士に依頼して債務整理を開始すると、貸金業者は督促ができなくなります。

貸金業法21条1項9号は、弁護士・司法書士に依頼された場合に本人に直接督促を行うことを禁止しています。

弁護士・司法書士に依頼して債務整理をすれば、督促に悩まされることなく落ち着いて手続きを進めることが可能です。

自己破産・個人再生では弁護士に依頼したほうがかえって費用が安く済むこともある

自己破産では弁護士に依頼したほうがかえって費用が安く済むことがあります。

自己破産の手続きにも種類があり、手続きが簡易に終わる同時廃止という手続きを利用するためには、弁護士に依頼して申し立てを行うことが必要である場合があります。

自分で申し立てを行ったり、自分で申し立てを行ったのと同一の取り扱いになる司法書士に依頼した場合、内容を精査する必要から同時廃止という簡易な手続きで終わらせられず、少額管財・通常管財という手続きになることがあり、その結果費用が余計にかかることがあります。

同様に、個人再生をする場合でも、個人再生委員がつけられるため費用が余計にかかることがあります。

そのため、自己破産・個人再生をする際には弁護士費用が必要なのですが、トータルでは費用が安くなることもあります。

弁護士・司法書士に債務整理を相談・依頼するには

弁護士・司法書士に債務整理を相談・依頼するには、次のような流れで行います。

事務所に連絡をとり相談の予約を行う

債務整理は、まず弁護士・司法書士と相談して行うことになります。

そのため、まずは弁護士・司法書士と連絡をとり、相談の予約をとります。

事務所のホームページにはかならず、相談のための電話やメールフォームがあるので、これらを使って相談の予約をとりましょう。

相談をする

相談の日時に弁護士・司法書士の事務所に赴いて相談を行います。

事務所に訪問するのが基本ですが、弁護士・司法書士によっては自宅まで出向いてくれる場合もありますし、電話やweb会議システムを使っての相談に応じていることもあります。

相談は複数の弁護士・司法書士に行ってもかまいません。

弁護士・司法書士に依頼をする

弁護士・司法書士に債務整理の手続きを依頼します。

契約書を取り交わし、着手金の一部を支払います。

以後は貸金業者からの督促も止まります。

報酬を分割で支払う

弁護士・司法書士への報酬を一括で支払うことは通常難しいことが多いです。

多くの債務整理の依頼を受けている事務所は、報酬を分割で支払うことを認めているので、その分割の報酬の支払いを行います。

弁護士・司法書士が債務の調査を行う

分割での報酬の支払いをしている間、弁護士・司法書士は債権者に取引の履歴の提出を求め、提出された取引履歴をもとに、債務の調査を行います。

過去に利息制限法以上の利息で返済をしていた場合には、過払い金があることもあります。

各手続きを行う

報酬の分割での支払いが終わり、弁護士・司法書士の債務の調査が終わると、具体的な手続きが行われます。

任意整理であれば貸金業者と交渉をする、自己破産・個人再生であれば裁判所への申し立てを行います。

まとめ

このページでは、債務整理をするにあたってのデメリットを中心にお伝えしました。

債務整理は借金返済を楽にしてくれる効果がある一方で、手続きに伴うデメリットも存在します。

これらのデメリットが生活に影響するかは人によって異なり、大きな影響がある場合でも適切な手続きを選択することで、デメリットを回避することも可能です。

まずは弁護士・司法書士に相談をして、どのような手続きが適切で、その際に発生するデメリット・回避方法などを確認するのが良いでしょう。 

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この記事を書いた人

神奈川大学法学部法律学科卒
2007年旧司法試験短答式・行政書士試験合格
2007年より法律事務所で勤務債務整理事務に従事
2018年より法律系を中心に解説記事の執筆をはじめる
相続・FX・旅行やグルメなども得意分野

債務整理に従事した経験から弁護士・司法書士に依頼する人の不安をなくしたいと考えています。

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