個人再生における再生計画認可決定とは?
個人再生の目的は,債務減額等を定めた再生計画を裁判所に認可してもらうことにあります。認可してもらうためには,裁判所に再生計画認可決定を発令してもらう必要があります。再生計画認可決定が発令されると,再生計画の効力が生じ,すべての再生債権者の権利が,再生計画で定めた一般的基準に従って変更されることになります(民事再生法232条2項,244条)。ただし,再生計画認可決定を発令してもらうためには,さまざまな要件を充たしていなければなりません。
ここでは,この個人再生における再生計画認可決定について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
個人再生における再生計画認可決定
個人再生の目的は,債務の減額等を定めた再生計画を裁判所に認可してもらうことにあります。認可してもらうためには,裁判所に再生計画認可決定を発令してもらう必要があります。
再生計画は,どのような返済計画を定めてもよいわけではありません。民事再生法の定めに従って計画を策定する必要はあります。しかし,大幅な借金・債務の減額や長期の分割払い計画を定めることができます。
この債務減額等を定めた再生計画について,裁判所により再生計画認可の決定がされると,以降は,その再生計画に従って返済をしていけばよいことになります。
もっとも,再生計画認可決定をしてもらうためには,さまざまな要件を充たしていなければなりません。
>> 個人再生とは?
再生計画認可決定の効果
再生計画認可決定がされると,再生計画の効力が生じます。その結果,すべての再生債権者の権利が,再生計画で定めた一般的基準に従って変更されることになります(民事再生法232条2項,244条)。
一般的基準とは,すべての再生債権者について,債務がどのくらいの割合で減額されるのか,分割払いの弁済をどのように支払っていくのかなどを定めた基準です。
したがって,再生計画認可決定が確定した後は,一般的基準に従って,減額された借金・債務を分割払いで支払っていけばよいことになります。
例えば,一般的基準に減額率80パーセント・3年間の毎月末日払いと定めてあったとすれば,すべての借金・債務が80パーセント減額され,その減額された借金・債務を3年間の毎月末日払いで支払っていけばよくなるということです。
ただし,個人再生の場合,再生計画が認可されても実体的な権利が確定するわけではなく,手続内で確定するに過ぎません。
そのため,手続内で確定しなかった債権については,再生計画に基づく履行が終わった後に,別途支払いをしていくという扱いになります(民事再生法232条3項,244条)。
なお,再生計画認可決定が確定すると,個人再生の手続は,当然に終結します(民事再生法233条,244条)。
再生計画認可決定の要件
再生計画認可決定を受けるためには,再生債務者が自ら再生計画案を作成して,これを定められた期限までに裁判所に提出する必要があります。
とはいえ,提出すれば必ず認可されるわけではありません。民事再生法に定める各種の要件を充たしていなければなりません。
小規模個人再生の場合の再生計画認可要件
小規模個人再生の場合に再生計画認可決定を受けるための要件としては,以下のものがあります。
- 再生計画案の決議が可決されたこと(不同意回答をした再生債権者が再生債権者の頭数総数の半数に満たず,かつ,不同意回答をした再生債権者の再生債権額が再生債権の総額の2分の1を超えていないこと)
- 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
- 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
- 再生計画遂行の見込みがあること
- 再生計画の決議が不正の方法によって成立したものでないこと
- 再生計画の決議が再生債権者の一般の利益に反していないこと
- 再生債務者が将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあること(収入要件)
- 再生債権総額が5000万円を超えていないこと
- 計画弁済総額が最低弁済額を下回っていないこと
- 清算価値保障原則を充たしていること
- 債権者一覧表に住宅資金特別条項を利用する意思があるという記載をした場合には,再生計画に住宅資金特別条項を定めていること
なお,再生計画案の決議が可決されたことは,厳密に言うと再生計画認可の要件そのものではありませんが,可決されなければ手続が廃止により打ち切りとなり,認可を受けることもできなくなるため,要件の1つとして挙げています。
給与所得者等再生の場合の再生計画認可要件
給与所得者等再生の場合に再生計画認可決定を受けるための要件としては,以下のものがあります。
- 再生手続に不備を補正できない重大な法律違反がないこと
- 再生計画に不備を補正できない法律違反がないこと
- 再生計画遂行の見込みがあること
- 再生債権額が5000万円を超えないこと
- 再生計画に基づく弁済額が民事再生法231条2項3号から4号に定める最低弁済額を下回っていないこと
- 再生計画が再生債権者の一般の利益に反しないこと
- 清算価値保障原則を充たしていること
- 債務者に給与またはこれに類する定期的な収入を得ていること
- 定期的な収入の額の変動の幅が小さいことが見込まれること
- 過去の給与所得者等再生の再生計画が遂行された場合の当該再生計画認可決定確定日,ハードシップ免責がされた場合の当該再生計画認可決定確定日,破産免責許可決定確定日から7年以内にされた申立てでないこと
- 計画弁済総額が可処分所得額の2年分以上であること
- 債権者一覧表に住宅資金特別条項を利用する意思があるという記載をした場合には,再生計画に住宅資金特別条項を定めていること
住宅資金特別条項を利用する場合の再生計画認可要件
住宅資金特別条項を利用する場合には,上記の小規模個人再生・給与所得者等再生における各再生計画認可要件に加えて,以下の要件を充たしていることも必要となります。
- 住宅資金特別条項の対象となる債権が「住宅資金貸付債権」に当たること
- 住宅資金貸付債権が法定代位により取得されたものでないこと
- 対象となる住宅に住宅ローン関係の抵当権以外の担保が設定されていないこと
- 対象となる住宅以外の不動産にも住宅ローン関係の抵当権が設定されている場合には,その住宅以外の不動産に後順位抵当権者がいないこと
- 個人再生申立ての際に提出する債権者一覧表に住宅資金特別条項を定めた再生計画案を提出する意思がある旨を記載すること
- 保証会社が住宅資金貸付債権の保証債務を履行(代位弁済)した場合は,その保証債務の全部を履行(代位弁済)した日から6か月を経過する日までの間に再生手続の申立てがされたこと
- 住宅資金特別条項を定めた再生計画案を期限内に提出したこと
- 再生計画が遂行可能であると認められること
- 再生債務者が住宅の所有権又は住宅の用に供されている土地を住宅の所有のために使用する権利を失うこととなると見込まれないこと
>> 住宅資金特別条項を利用する場合における再生計画認可要件とは?
再生計画認可決定の確定
再生計画認可決定が発令されると,決定日から概ね2週間後に,再生債務者の氏名や住所等とともに,再生計画認可決定が発令されたことが官報公告されます。
この官報公告日の翌日から2週間が経過すると,再生計画認可決定が確定します。確定後は,もはや不服申立てをすることはできなくなります。
再生計画認可決定確定後の手続
再生計画認可決定が確定した後から,再生計画に基づく返済が開始されます。具体的に確定後いつから返済開始になるかは,再生計画に定めることになっています。
例えば,再生計画認可決定確定日の属する月の翌月末日からと定めていた場合,確定日が令和4年5月20日であれば,確定日の属する月(5月)の翌月(6月)末日が返済の開始ということになります。
再生計画に基づく返済をすべて完了すれば,それ以降,返済をする必要はなくなります。
他方,再生計画に基づく返済をしなかった場合,再生債権者の申立てによって再生計画認可決定が取り消され,減額等の効果も失われ,個人再生する前のもともとの債務に戻ってしまいます。
そのため,再生計画に基づく返済が難しくなった場合には,再生計画変更の申立て等の対処法を考えなければなりません。
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