個人再生の再生手続開始原因とは?
個人再生を含む民事再生手続を開始してもらうためには,再生手続開始原因があることが必要となります。再生手続開始原因とは,債務者に破産手続開始の原因(支払不能)となる事実の生ずるおそれがあること,または,債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないこと,を意味します(民事再生法21条1項)。
ここでは,個人再生の再生手続開始原因について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
再生手続開始原因とは
個人再生を含めて,民事再生手続を開始してもらうためには,再生手続開始の申立てをしなければなりません。
しかし,再生手続開始の申立てさえすればどのような申立てでもよいわけではありません。
個人再生を含む民事再生手続を開始してもらうためには,債務者に再生手続開始原因があることが必要です(民事再生法33条)。
民事再生法 第21条 第1項
債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは,債務者は,裁判所に対し,再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも,同様とする。
再生手続をとるということは,債権者に大きな損失をもたらすことでもあります。そのため,再生手続を利用するには,債権者に損失を与えるとしてもやむを得ない程度の状況にあるということが必要となってきます。
それが,再生手続開始原因という要件です。再生手続開始原因とは,要するに,債務者が民事再生を利用しなければならないような状態にあるかどうかということを吟味するための要件といえます。
具体的にいうと,上記条文のとおり,再生手続開始原因は,以下の場合に認められます。
- 債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき
- 債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないとき
この要件は,民事再生全般に必要となる再生手続開始要件です。もちろん個人再生(個人民事再生)の場合にも必要となります。
破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき
破産手続開始の原因となる事実とは,破産手続開始原因事実のことを意味します。この破産手続開始原因には,支払不能と債務超過の2つがあります。
したがって,再生手続開始原因である「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれ」とは,支払不能又は債務超過の事実を生ずるおそれ,もっと簡単に言うと,支払不能又は債務超過になってしまうおそれがあることということです。
この要件からも分かるとおり,再生手続は,破産になる一歩手前の状態の人の救済を予定しているといます。
では,支払不能や債務超過となる「おそれ」ではなく,現実に支払不能や債務超過となってしまった場合には,もはや再生手続をとることはできず,破産するしかないのかというと,そんなことはありません。
実は,この「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれ」には,実際に支払不能や債務超過となってしまった場合も含むものと考えられています。
したがって,支払不能や債務超過となってしまったとしても,再生手続開始原因はあるものとされ,再生手続をとることは可能です。
なお,個人の破産の場合には,破産手続開始原因は支払不能のみです。債務超過は個人破産の破産手続開始原因になりません。
したがって,個人再生において「破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるとき」とは,支払不能になるおそれがあるとき,ということになります。
>> 破産手続開始原因とは?
事業継続の著しい支障なく弁済期の債務を弁済できないとき
債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないことというくらいですから,単に弁済期に弁済できないということではありません。
単に弁済期に弁済できないというのでは,支払不能です。
ここでは,「事業の継続に著しい支障を来すことなく」弁済できるのかどうかが問題となっています。
例えば,事業に利用している建物や土地,その他機械などを売れば,何とか弁済することはできるが,それを売ってしまったら事業自体が継続できなくなってしまう,というような場合のことをいうのです。
「著しい支障」ですから,ちょっとした支障が出る程度では足りません。上記のように事業継続自体が危ぶまれるほどの支障が出る場合であると考えるべきでしょう。
個人再生においても,小規模個人再生であれば個人事業者でも利用が可能ですから,この「事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができない」という再生手続開始原因が問題となることはあり得るでしょう。
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