自己破産における取戻権とは?
取戻権とは,真の権利者等が,破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利のことをいいます(破産法62条)。
ここでは,この自己破産における取戻権について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
取戻権とは?
破産法 第62条
破産手続の開始は,破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利(第64条及び第78条第2項第13号において「取戻権」という。)に影響を及ぼさない。
自己破産の手続においては,破産者の財産は破産管財人によって管理・換価処分されて債権者に分配されることになります。この破産管財人が管理処分することになる財産の集合体のことを「破産財団」といいます。
破産財団に組み入れられることになる財産とは,破産者の財産です。しかし,個別の事情によっては,破産者が所有する財産ではないにもかかわらず,破産財団に組み入れられる形になっているという場合もあり得ます。
例えば,リース物件などは,基本的にはリース会社の所有物です。しかし,外形上は破産者が所持していますから,破産手続き開始の時点では破産財団所属の財産として取り扱われるという場合もあります。
しかし,破産財団に組み入れられたままですと,当然,破産管財人によってその財産は換価処分されてしまいます。これでは,その財産の本来の所有者である第三者は不利益を受けてしまいます。
そこで,外形上破産財団に所属する財産であっても,真の所有者等の権利者には,当該財産は破産財団に所属する財産ではないことを主張して,その財産を自分のもとへ取り戻すことができる権利が認められています。
この権利のことを「取戻権」といいます。すなわち,取戻権とは,破産者に属しない財産を破産財団から取り戻す権利です(破産法62条)。
否認権が破産財団の外にある財産を破産財団に組み入れようとするイメージであるのに対し,取戻権は破産財団の内にある財産を破産財団から外へ出そうとするイメージです。
取戻権の種類
破産法 第63条
第1項 売主が売買の目的である物品を買主に発送した場合において,買主がまだ代金の全額を弁済せず,かつ,到達地でその物品を受け取らない間に買主について破産手続開始の決定があったときは,売主は,その物品を取り戻すことができる。ただし,破産管財人が代金の全額を支払ってその物品の引渡しを請求することを妨げない。
第2項 前項の規定は,第53条第1項及び第2項の規定の適用を妨げない。
第3項 第1項の規定は,物品の買入れの委託を受けた問屋がその物品を委託者に発送した場合について準用する。この場合において,同項中「代金」とあるのは,「報酬及び費用」と読み替えるものとする。
破産法 第64条
第1項 破産者(保全管理人が選任されている場合にあっては、保全管理人)が破産手続開始前に取戻権の目的である財産を譲り渡した場合には,当該財産について取戻権を有する者は,反対給付の請求権の移転を請求することができる。破産管財人が取戻権の目的である財産を譲り渡した場合も,同様とする。
第2項 前項の場合において,破産管財人が反対給付を受けたときは,同項の取戻権を有する者は,破産管財人が反対給付として受けた財産の給付を請求することができる。
この取戻権には,「一般取戻権」,「特別取戻権」及び「代償的取戻権」の3つの類型があるとされています。
一般取戻権とは,破産法以外の実体法に基づいて認められる取戻権です。代表的なものは,所有権者による取戻しです。
また,所有権のような物権的請求権だけでなく,賃貸借契約の終了に基づく賃貸物返還請求権などの債権的な請求権も,取戻権に当たるものと解されています。
特別取戻権とは,破産法によって特別に認められる取戻権です。一般的な実体法には規定がないため取戻権とは認められないはずのものを,破産法によって特別に取戻権の対象としたのが,特別の取戻権です。
具体的には,「売主の取戻権」と「問屋の取戻権」があります。
もう1つは,代償的取戻権です。
これは,すでに破産管財人によって,本来取り戻せたはずの財産が換価処分されてしまい取り戻せなくなってしまった場合に,その財産の代わりとなる代償を求めることができるという取戻権者の権利のことをいいます。
たとえば,ある財産が破産管財人によって売却処分されてしまったとします。
実は,その財産の所有権は破産者でないAさんの物であったという場合,その財産をもはや取り戻せなくなっているのであれば,Aさんは,破産管財人に対して,その売買代金を自分に支払うように請求することができるということです。
取戻権の効果
前記のとおり,取戻権の効果は,破産財団に所属している財産を自分のもとに取り戻すことができるという効果を持っています。
具体的には,破産財団所属の財産を管理している破産管財人に対して,その財産の引渡しや支払いを請求することになります。
また,前記のとおり,すでに換価処分されてしかも取戻しができなくなってしまっている場合には,破産管財人に対して,その財産の代償の支払いを求めることもできます。
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