東京地方裁判所の財産換価(自由財産拡張)基準とは?
東京地方裁判所(本庁・立川支部)においては,本来は換価処分が必要であるものの,自由財産拡張を申し立てることなく,当然に自由財産が拡張されたものとして扱われる(換価処分を要しなくなる)財産の基準を定めています。これを「換価基準」や「自由財産拡張基準」と呼ぶことがあります。
ここでは,東京地方裁判所(本庁・立川支部)における自己破産の財産換価(自由財産拡張)基準について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
自由財産の拡張
破産手続は,破産者の財産を換価処分して,それによって得た金銭を債権者に配当するという手続ですから,自己破産をした場合には,財産の処分が必要となってきます。
もっとも,個人の自己破産の場合,すべての財産を処分してしまうと,その後の生活ができなくなってしまい,かえって破産者の経済的更生を妨げることになるおそれがあります。
そこで,生活に必要となる一定の財産については,自己破産をしても処分しなくてよいとされています。この処分しなくてもよい財産のことを「自由財産」といいます。
どのような財産が自由財産となるかは,原則として,法律で定められています。
もっとも,法律で定められているもの以外でも,裁判所が,自由財産として扱ってよいと決定したものについては,自由財産として扱われ,処分が不要となります。このことを「自由財産の拡張」と呼んでいます。
どのような場合に自由財産の拡張が認められるのかというのは,個々の事情によって異なってきますので,一概にこの財産については拡張が認められるとはいえません。
あくまで,裁判所や破産管財人の判断にかかっているのが原則です。
>> 自由財産の拡張とは?
自己破産における財産換価(自由財産拡張)基準とは
通常,法律で自由財産として扱うということが明記されていない財産については,破産者の側で自由財産の拡張の申立てを行い,その申立てが適切かどうかを破産管財人が調査し,その調査や意見に基づいて裁判所が自由財産の拡張を決定するという手順を踏みます。
しかし,法律には明記されていないけれども,明らかに,破産者の経済的更生のために必要と思われる財産があることは確かです。
そのような財産についてまで,わざわざ裁判所や破産管財人の調査や判断を求めるというのは非効率的です。
そこで,各地の裁判所では,それぞれ独自に,自己破産における財産の換価基準を設けています。換価基準とは,個別に判断するまでもなく,一律に換価することを要しない一定の財産を定める基準のことです。
言い換えれば,あらかじめ,自由財産の拡張が認められる財産のリストを定めているということです。そのため,この換価基準は,自由財産拡張基準と呼ばれることもあります。
この財産換価(自由財産拡張)基準に当たる財産については,法律上の自由財産ではないものの,当該裁判所においては自由財産として扱われ,自己破産によっても処分をしなくてもよいことになります。
>> 自由財産とは?
東京地方裁判所の財産換価(自由財産拡張)基準
前記財産換価(自由財産拡張)は,各地の裁判所によって若干異なってきます。東京地方裁判所(東京地裁)でも,独自の基準を設けています。
東京地裁における財産換価(自由財産拡張)基準では,以下の財産について換価処分が不要とされています。
- 残高(複数ある場合は合計額)が20万円以下の預貯金
- 見込額(数口ある場合は合計額)が20万円以下の生命保険解約返戻金
- 処分見込額が20万円以下の自動車
- 居住用家屋の敷金債権
- 電話加入権
- 支給見込額の8分の1相当額が20万円以下の退職金債権
- 支給見込額の8分の1相当額が20万円を超える退職金債権の8分の7相当額
- 家財道具
これらに当たる財産については,自由財産拡張の申立てをすることなく,自由財産として扱われることになります。
なお,この東京地方裁判所の換価基準は,全国の多くの裁判所でも採用されています。
東京地裁本庁だけでなく,立川支部でも採用されていますし,それ以外の裁判所でも採用されている場合があります。その意味では,スタンダードな基準といえるでしょう。
もっとも,大阪地裁などでは,東京地裁とは別に,独自の換価基準を定めていることもありますので,あらかじめ確認しておく必要はあります。
換価(自由財産拡)基準に該当しない財産の自由財産の拡張
前記のとおり,東京地裁においては,それなりに多くの財産について,申立てを要しない自由財産の拡張が認められています。
その反面,上記財産換価(自由財産拡張)基準に該当しない財産について,さらに自由財産の拡張を申し立てる場合,自由財産の拡張が認められることはなかなか難しくなっているのが現状です。
換価価値が20万円以下の財産であったり,拡張されている財産とあわせても価値が99万円以下であるというような場合であれば,自由財産の拡張が認められる可能性はありますが,それを超える価値の財産については,その財産を処分できないという合理的な理由がなければ,拡張が認められる可能性は低くなっています。
東京地方裁判所の財産換価(自由財産拡張)基準に関連する記事
この記事がお役に立ちましたらシェアお願いいたします。
自己破産のことならLSC綜合法律事務所にお任せください
個人の自己破産申立てに強い弁護士をお探しの方がいらっしゃいましたら,債務整理のご相談実績2500件以上,自己破産申立て300件以上,東京地方裁判所立川支部で破産管財人実績もある,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所にご相談・ご依頼ください。
自己破産のご相談は「無料相談」です。まずはご相談ください。
※なお,お電話・メールによるご相談は承っておりません。弊所にご来訪いただいてのご相談となりますので,あらかじめご了承ください。
LSC綜合法律事務所
所在地
〒190-0022東京都立川市錦町2丁目3-3 オリンピック錦町ビル2階
ご予約のお電話
042-512-8890
代表弁護士 志賀 貴
日本弁護士連合会:登録番号35945(旧60期)
所属会:第一東京弁護士本部および多摩支部
>> 日弁連会員検索ページから確認できます。
アクセス
最寄駅:JR立川駅(南口)・多摩都市モノレール立川南駅から徒歩5~7分
駐車場:近隣にコインパーキングがあります。