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自己破産

破産手続開始決定(旧破産宣告)の効力とは?

自己破産の手続は,裁判所による破産手続開始決定(旧破産宣告)によって開始されます。この破産手続開始決定がされると,破産者の財産の管理処分権は破産管財人に専属することになり,破産者は自分で財産を勝手に管理処分することができなくなります。他方,破産債権者は,破産手続によってしか権利行使をすることができなくなり,個別的な権利行使が制限されます。また,破産者は,説明義務や重要財産開示義務等の義務を課されます。加えて,破産者には,資格制限,破産手続期間中における居住の制限や通信の秘密の制限などが生じます。

ここでは,破産手続開始決定(旧破産宣告)にはどのような効力があるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

破産手続開始決定(旧「破産宣告」)

自己破産を申し立てたからといって,それだけですぐさま破産手続が開始されるというわけではありません。破産手続は,裁判所による「破産手続開始決定」によってはじめて開始されることになります。

破産手続開始決定とは,文字どおり破産手続を開始することを認める決定のことをいいます。 

かつては「破産宣告」と呼ばれていた決定のことです。破産手続開始決定によって破産手続が開始され,これに伴ってさまざまな効力が発生し,また各種の付随処分がなされます。 

>> 破産手続はどのように開始されるのか?

破産管財人への財産管理処分権の専属

破産法 第78条 第1項

破産手続開始の決定があった場合には,破産財団に属する財産の管理及び処分をする権利は,裁判所が選任した破産管財人に専属する。

破産手続は,債務者の財産を換価処分して,それによって得た金銭をすべての破産債権者に平等・公平に弁済または配当するという手続です。

したがって,破産手続において最も重要なことは,債務者の財産を確保することです。債務者の財産が散逸してしまわないようにしなければいけません。

そのため,破産手続開始決定がなされると,裁判所によって破産管財人が選任され,債務者の財産は破産財団として扱われ,その管理処分権限が破産管財人に専属することになります(破産法78条1項)。

破産者の財産の管理処分権が破産管財人に属することになるのですから,破産者は,財産を自分で処分することはできなくなります。

ただし,自由財産に該当する財産(破産法34条3項,4項)は,破産管財人に管理処分権が専属せず,破産者が自由に管理・処分することが許されています。

破産債権者の個別的権利行使の制限

破産法 第100条 第1項

破産債権は,この法律に特別の定めがある場合を除き,破産手続によらなければ,行使することができない。

たとえ破産者が財産を自由に管理処分できないことにしても,各債権者が早い者勝ちで債権回収ができるとなれば,公平・平等に財産を分配することはできなくなってしまいます。

そのため,破産債権者は破産手続によらなければ権利を行使することができくなります(破産法100条1項)。

つまり,破産債権者は,破産手続開始後に強制執行等をして債権の回収を図ることは制限されることになるのです。

破産者の義務の発生

前記のとおり,破産手続において最も重要なことは,破産者の財産を換価処分することです。したがって,債務者の財産を正確に把握することが重要です。

そのため,破産手続開始決定がなされると,破産者には,以下のような義務が課されます。

  • 破産に関する説明義務(破産法40条1項1号)
  • 重要財産の開示義務(破産法41条)
  • 債権調査期日への出頭・意見陳述義務(破産法121条,122条)

居住制限

破産法 第37条

第1項 破産者は,その申立てにより裁判所の許可を得なければ,その居住地を離れることができない。
第2項 前項の申立てを却下する決定に対しては,破産者は,即時抗告をすることができる。

前記の破産者の説明義務などを十分に果たさせるためには,裁判所が破産者の所在をしっかりと把握しておく必要が出てきます。

そのため,破産手続開始決定によって,債務者には居住制限が課され,裁判所の許可なく居住地を離れることができなくなります。

ただし,居住を移転する場合でも,あらかじめ移転先を裁判所や破産管財人に伝えておけば,外国移住のような連絡が困難となるおそれがある場合を除いて,居住移転の許可をしてもらえるのが通常です。 

通信の秘密の制限

破産法 第81条

第1項 裁判所は,破産管財人の職務の遂行のため必要があると認めるときは,信書の送達の事業を行う者に対し,破産者にあてた郵便物又は民間事業者による信書の送達に関する法律 (平成14年法律第99号)第2条第3項に規定する信書便物(次条及び第108条第5項において「郵便物等」という。)を破産管財人に配達すべき旨を嘱託することができる。
第2項 裁判所は,破産者の申立てにより又は職権で,破産管財人の意見を聴いて,前項に規定する嘱託を取り消し,又は変更することができる。
第3項 破産手続が終了したときは,裁判所は,第1項に規定する嘱託を取り消さなければならない。
第4項 第1項又は第2項の規定による決定及び同項の申立てを却下する裁判に対しては,破産者又は破産管財人は,即時抗告をすることができる。
第5項 第1項の規定による決定に対する前項の即時抗告は,執行停止の効力を有しない。

破産法 第82条

第1項 破産管財人は,破産者にあてた郵便物等を受け取ったときは,これを開いて見ることができる。
第2項 破産者は,破産管財人に対し,破産管財人が受け取った前項の郵便物等の閲覧又は当該郵便物等で破産財団に関しないものの交付を求めることができる。

破産手続開始決定による付随的処分として,破産管財人が破産者の財産等を調査するため,裁判所は,破産者宛の郵便物を破産管財人に配達するように郵便事業者に嘱託することができます。

つまり,破産者宛ての郵便物を破産管財人に転送する措置をとることができるということです。そして,破産管財人は,受け取った郵便物等を開封して,その郵便物の内容を調査することができるとされています。

この転送期間は,通常,破産手続開始の時から第1回の債権者集会の時までです。ただし,継続調査が必要となる場合には,転送が延長されることもありますが,いずれにしても破産手続の間だけです。 

資格制限

破産手続開始決定の効力そのものではありませんが,破産手続開始決定がなされると,破産者は一定の資格を使えなくなります。

もちろん,この資格の制限は,破産免責許可確定により復権すれば解除されることになりますが,少なくとも,それまでは,一定の資格を使った仕事ができなくなります。

例えば,よくあるものとして,警備員や保険外交員,宅地建物取引主任者などがあります。弁護士や公認会計士なども同様です。また,成年後見人・未成年後見人,遺言執行者などにもなることができなくなります。 

なお,会社の取締役は資格ではありませんが,破産手続開始決定によって,会社と取締役との間の委任契約が終了となるため,実際は,破産手続開始決定によって取締役としての地位を失うことになります。

>> 自己破産における資格制限とは?

官報公告

第32条 第1項

裁判所は,破産手続開始の決定をしたときは,直ちに,次に掲げる事項を公告しなければならない。
破産手続開始の決定の主文
破産管財人の氏名又は名称
前条第1項の規定により定めた期間又は期日
破産財団に属する財産の所持者及び破産者に対して債務を負担する者(第3項第2号において「財産所持者等」という。)は,破産者にその財産を交付し,又は弁済をしてはならない旨
第204条第1項第2号の規定による簡易配当をすることが相当と認められる場合にあっては,簡易配当をすることにつき異議のある破産債権者は裁判所に対し前条第1項第3号の期間の満了時又は同号の期日の終了時までに異議を述べるべき旨

破産手続開始決定がなされると,その付随処分として,破産手続開始決定がされたことが官報に公告されることになります。

ちなみに,官報とは,国が刊行している唯一の機関紙で,法律や条例の制定・改正など国民に広く知らせねばならない事項を掲載したもののことをいいます。

また,公告とは,文字どおり,公に告げることです。国が,官報等を使って,特定の事項を広く国民に知らせることを言います。

その他の効力・付随処分等

前記のほか,破産手続開始決定がなされると,同時処分として,破産管財人の選任決定や破産債権届出期間・財産状況報告集会期日・破産債権調査期間又は期日の決定などがなされます。

また,付随処分としては破産管財人・知れたる債権者等に対する公告事項の通知や監督官庁等への通知なども行われます。

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