借金の返済が行き詰まってくると「自己破産した方がいいんだろうか」、と悩む方が多いのではないでしょうか。
「自己破産」=「借金がチャラになる」というイメージがありますし、再スタートを切る意味で有効な手段なのでは、と思いますよね。
自己破産することで確かに人生を再スタートできますが、同時にデメリットもいくつか存在します。
会社にはバレるのか?クレジットカードが持てないって本当?財産は0になってしまうの?自己破産すると漠然とヤバそうな気がする・・・。
そこで今回は自己破産のデメリットを中心に、覚えておくべきポイントを詳しくご紹介していきたいと思います。
自己破産のデメリットや注意すべきポイントを整理して、自分は自己破産した方がいいのかどうか、判断材料の一つにしていただければと思います。
自己破産の8つのデメリットを解説
早速、自己破産をするデメリットをご紹介したいと思います。
数多くありますが、自己破産をすることでどのようなデメリットが生じるのか事前に理解をしておきましょう。
官報に自己破産歴が掲載される
自己破産をすると官報(国が発行する新聞のようなもの)に履歴が掲載されます。
官報を見る人自体はそれほど多くありませんが、チェックすればいつ誰が自己破産したかの事実が知られてしまいます。
知り合いが官報を見て自己破産したことがバレる可能性は低いものの、「官報に掲載される」ことは頭に入れておきましょう。
一部の職業に就けなくなる
自己破産の手続きを開始すると完了まで一部の職業には就けなくなります。
- 弁護士
- 司法書士
- 宅建士
- 行政書士
- 公認会計士
- 税理士
- 警備員
- 宅地建物取引士
など
上記のような資格が必要な職業については、自己破産が完了するまで就業が制限されるので注意してください。
ブラックリストに登録される
自己破産をすると信用情報機関に履歴が一定期間掲載されてしまいます。
金融事故の履歴が掲載されることを「ブラックリストに載る」と表現しますが、履歴が残る5〜10年の期間はクレジットカードやローンの審査はまず通りません。
一定期間が経過するまで上記のようなサービスは使えないと思ってください。
郵便物が破産管財人に転送される
自己破産が開始されると破産者宛の郵便物は全て破産管財人に転送され、中身も全てチェックされます。
債権者や財産に関する情報を調査するのが目的で、それ以外の目的では使用されませんが、自己破産をする上で頭に入れておく必要があるでしょう。
換金性の高い財産が処分される
自己破産をすると自己が所有する換金性の高い財産は処分されて、債権者への返済に利用されます。
具体的には「99万円以上の現金」や「20万円以上の資産価値のあるもの」が処分されます。
マイカーやマイホームも対象となりますし、基本的には生活に必要な最低限の物と一定の現金しか残らないと思ってください。
連帯保証人に迷惑がかかる
借金に連帯保証人が設定されている場合、自己破産をしても連帯保証人が借金の返済義務を負うことになります。
借金をした本人は自己破産で返済が免除されるものの、連帯保証人は免除されず、代わりの返済者となって借金を背負うことになるため、迷惑がかかってしまいます。
手続き中は引越しがほぼできない
自己破産(管財事件の場合)の手続き中、破産者は引越しをすることが基本的にできません。
裁判所の許可を得ないかぎり、引越しや旅行などで居住地を離れられず、移動の自由がある程度制限されてしまいます。
自己破産自体にも費用がかかる
当然ながら自己破産の手続き自体にも費用がかかりますし、自己破産をしても支払いは免除されません。
自己破産の費用相場は30〜100万円程度と言われているため、借金の金額と見比べて自己破産をすべきかどうかを判断しましょう。
家族がいる場合の自己破産のデメリット4つ
破産者に家族がいる場合には、また別の事情でデメリットが発生します。
家族がいる方で自己破産を検討している方は、以下で解説するデメリットを把握しておきましょう。
家や車が処分されて生活に困る
自己破産をすると家や車といった財産は処分されて債権者への返済に充てられるため、家族もその家に住み続けられなくなります。
引越しが必要になりますし、車がなくて日常生活が困る可能性も考えられるでしょう。
保証人に家族が設定されていると借金を肩代わりする
破産者の配偶者が保証人になっている場合、自己破産をしても保証人に返済の義務が移ります。
同じ家の中で借金が移動するだけになってしまうため、自己破産をする意味が薄れてしまうでしょう。
保険などが解約される可能性がある
生命保険や学資保険などで保険を解約した際に戻ってくる解約返戻金が20万円以上の保険は、全て解約の対象となります。
こちらも財産と判断されて債権者への返済に充てられるのですが、保険の解約によって家族に影響が出てしまう可能性があります。
子供名義の貯金が処分される場合もある
子供の将来のために親が貯金をしている場合、破産者名義の資産と判断されて処分の対象になる可能性があります。
自分の資産を子供のために積み立てている場合には注意が必要です。
自己破産しない方がいいのはどんな人?
ここまで自己破産のデメリットを解説しましたが、上記を踏まえた上で自己破産がおすすめではない人を解説します。
以下に該当する人は自己破産をする前に、もう一度検討し直してください。
マイホームやマイカーなど失うと困る財産を所有している
自己破産をすると家や車といった財産が処分される可能性が高く、生活に大きな影響を与えてしまいます。
子供の送迎や日々の買い物など車がないと生活が不便になるなど、失うと困る財産を所有している場合は、安易に自己破産をしない方がいいでしょう。
資格制限を受ける職業に従事している
自己破産をすることで資格が制限される職業に従事されている方は、手続き中は業務に就けなくなります。
業務の調整ができない場合や、職場に自己破産がバレたくない場合には、自己破産を再検討しなければなりません。
連帯保証人を設定している
借金に連帯保証人を設定している場合、自己破産によって連帯保証人に迷惑をかけてしまいます。
連帯保証人がいる場合には自分だけの判断で自己破産をしないようにしてください。
自己破産以外の債務整理で問題解決ができる
借金の問題を解決する方法は自己破産だけではありません。
任意整理や個人再生など、借金の金額や本人の状況によっては債務の負担を調整することで現実的な完済プランを立てることも可能です。
自己破産にはデメリットも多いので、最終手段と捉えてできるだけ別の方法で解決するようにしましょう。
自己破産をするメリットは?
自己破産はデメリットばかりではなく一定のメリットがあります。
メリットとデメリットのそれぞれを理解しておけば後悔のない選択ができるので、自己破産のメリットについても詳しくみていきましょう。
借金の返済義務が免除されて再スタートができる
自己破産をすると借金の返済義務が免除されるため、経済的な再スタートができます。
借金の返済で行き詰まって生活が立ち行かなくなっている場合、返済が免除されれば生活を立て直せるでしょう。
生活再建のための最後の手段ではありますが効果は絶大です。
債権者からの督促や訴訟などの精神的な負担がなくなる
借金の返済が行き詰まっていると債権者からの督促や訴訟など、精神的な負担になることが多くなります。
多大な借金を背負っているだけで苦しい上に、常に返済を求められるのは非常に辛いのですが、自己破産を開始した時点で返済の督促などがなくなります。
精神的な負担を取り除いた上で生活再建に向けたプランを考えられるのは大きなメリットといえるでしょう。
必要最小限の財産は手元に残る
自己破産では財産が処分されるイメージが強いですが、必要最小限の財産は手元に残せます。
具体的には「99万円以下の現金」や「20万円以下の資産」「生活に必要な家財道具」などが挙げられるため、全てを失って一文無しになるわけではありません。
自己破産をした時点で生活が立ち行かなくなるわけではないので安心してください。
デメリットはあるが一部の人しか関係ないものが多い
自己破産をすることでさまざまなデメリットがありますが、一部の人にしか関係ないものも多いです。
例えば、自己破産による資格制限も該当する職業の人以外は関係ないですし、官報に掲載されるのもバレるリスクは低いでしょう。
生活に影響を与えるデメリットとしては「財産の処分」と「ブラックリストに掲載される」の2点がほとんどなので、実はデメリットよりもメリットが上回る人も多くいます。
自己破産を検討するときに注意すべきポイント
自己破産を検討する際にはいくつかのポイントに注意しなければなりません。
場合によって自己破産が認められないケースや自己破産をしても借金がチャラにならないケースがあるので注意してください。
自己破産できないタイプの借金がある
自己破産をするには裁判所からの許可を得なければならないのですが、借金の理由によっては借金の免責が認められない場合があります。
例えば、以下のような理由で借金をした場合には、自己破産ができない可能性が高いです。
- 浪費による借金
- ギャンブルによる借金
- 投資や投機による借金
など
ただし、上記の理由に該当する場合でも、借金を真摯に反省して生活再建に取り組む意思を示すことで免責が認められるケースもあります。
自己破産をしても返済義務が免除されない借金がある
自己破産をしても全ての借金の返済義務が免除されるわけではありません。
例えば、税金や健康保険料の支払いや損害賠償金、養育費などは、自己破産後も引き続き支払い義務が生じます。
借金<自己破産費用にならないようにする
借金の金額が少額の場合、自己破産で借金をチャラにしても手続き費用が上回って意味がなくなるケースがあります。
自己破産をしても借金と同程度の手続き費用の支払いが待っているため、100万円以下のような少額の借金で自己破産を検討するのはあまり意味がないでしょう。
自己破産後の生活はどうなっている?
自己破産を検討している方で「自己破産をした後ってどうなるの?」と疑問に思う人も多いはずです。
ここでは自己破産後の生活について具体的に解説します。
99万円以下の現金や生活必需品は手元に残る
自己破産で財産が処分されても、最低限の現金や生活必需品は残るため、生活に大きな支障はありません。
持ち家が処分された場合は早めに賃貸に引っ越す必要がありますが、自己破産をした直後に生活が立ち行かなくなることはないでしょう。
スマホは一部条件付きでそのまま使える
スマホは資産価値があるものとして処分される可能性がありますが、分割払いを支払い終わっている場合には引き続き使い続けられます。
財産として没収される場合も、スマホの価格が20万円以上である必要があるため、処分される可能性は低いでしょう。
一部の資格職以外は仕事はそのまま続けられる
自己破産によって就業が制限される職業以外の方は、引き続き仕事を続けられます。
職場に自己破産が知らされることもありませんし、クビになることもないので安心してください。
家はマイホームでなければそのまま住み続けられる
持ち家の場合は自己破産によって財産として処分される可能性がありますが、賃貸住宅であれば自己破産をしてもそのまま住み続けられます。
ただし、収入に対して高い家賃の家に住んでいる場合や、家賃を滞納している場合は解約される可能性があるので注意してください。
クレジットカードやローンの審査には10年近く通らなくなる
自己破産をすると信用情報機関に事故情報が記録されてしまうため、クレジットカードやローンの審査にはほぼ通りません。
事故情報は10年程度保管されるため、長期的に影響を及ぼすと考えてください。
税金や年金などの支払いは続く
自己破産をしても税金や年金の支払いが免除されるわけではありません。
引き続き支払いは続いていくので、自己破産後の生活についても計画を立ててください。
自己破産以外で借金問題を解決する方法はある?
借金問題を解決する方法は自己破産だけではありません。
「任意整理」や「個人再生」など、借金はチャラになりませんが、現実的な完済を目指す方法として有効ですし、自己破産ほどダメージも大きくありません。
借金の状況に応じて自分に合った債務整理を選ぶのが重要です。
任意整理は債権者と交渉して返済プランを決める方法
任意整理は債権者と交渉をして、利息や遅延損害金のカットや返済期限の延長などを行うことで、現実的な完済を目指す債務整理です。
利息が増えすぎて返済が進まない場合など、元本以外の部分が膨らんで返済に行き詰まっている場合に向いています。
自己破産のように財産を処分したり、資格制限を受けたりなどのデメリットもありません。
個人再生は裁判所を通じて借金を減額する方法
個人再生は裁判所を通じて手続きを行い、借金を1/5〜1/10まで減額することで完済計画を立てる債務整理です。
自己破産のように財産を失うリスクもありませんし、直接的に借金を減額できるため負担なく完済が目指せます。
自己破産のデメリットに関するよくある質問
自己破産のデメリットに関するよくある質問をまとめました。
ここまでの内容で疑問が思い浮かんだ人は参考にしてみてください。
自己破産をすると選挙権がなくなる?
自己破産をしても選挙権がなくなることはありません。
自己破産をすると年金が受け取れない?
公的年金は差し押さえが禁止されている債権なので、自己破産をしても問題なく受け取れますし、財産として処分されることもありません。
自己破産で会社を解雇されることはある?
自己破産を理由に会社を解雇される可能性は低いと考えられるでしょう。
一部の資格制限を受ける職業の場合には解雇事由に該当する可能性がありますが、一般的な職種であれば解雇のリスクは低いです。
自己破産をすると周囲にバレる?
自己破産の履歴が掲載された官報を見ないかぎり、自己破産が周囲にバレることはありません。
まとめ
自己破産のデメリットについて解説しました。
借金で行き詰まったときに自己破産を検討する人は多いですが、自己破産をするにしてもデメリットや注意点を事前に確認してください。
今回の記事を参考にして、自己破産のデメリットを理解した上で、自分にとって得かどうかを判断できるようにしましょう。