破産手続とは?
破産手続とは,破産法の定めに従って,債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する裁判手続のことをいいます(破産法2条1項)。破産手続においては,裁判所により選任された破産管財人が,自由財産を除く債務者の財産を換価処分して,それによって得た金銭を債権者に弁済または配当していくことになります。ただし,換価処分できる財産が無いことが明かな場合などには,破産管財人が選任されず,破産手続の開始と同時に破産手続が廃止により終了となること(同時廃止)もあります。いずれにしても,個人(自然人)の場合,財産を換価処分しても支払いきれなかった債務は,当然に消滅するわけではありませんが,破産手続とは別に行われる免責手続において,裁判所の免責許可決定を受けることにより,その支払義務を免れることができます。
ここでは,破産手続とは何かについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
倒産手続
経済的に破たんしたため,債務を弁済できない状態になること(またはその状態)のことを,一般に「倒産」と言います。
この倒産状態に陥った場合に,経済的更生を図るためまたは清算をするためにとられる法的な措置のことを「倒産手続」といいます。
倒産手続という用語は法律上の用語ではありませんが,法律学の講学上で倒産手続という用語が用いられています。
倒産手続には,法的倒産手続(法的整理)と呼ばれる類型と,私的倒産手続(私的整理)と呼ばれる類型があります。
法的倒産手続とは,要するに,裁判所の裁判手続による倒産手続のことをいいます。これには,民事再生,会社更生,特別清算などがありますが,法的整理の最も基本とされる手続が「破産手続」です。
いくつかある倒産手続のうちで基本類型とされるものが,破産手続であるというわけです。
>> 倒産法・倒産手続とは?
破産手続とは
破産法 第2条 第1項
この法律において「破産手続」とは,次章以下(第12章を除く。)に定めるところにより,債務者の財産又は相続財産若しくは信託財産を清算する手続をいう。
上記の破産法の条文に定義されているとおり,破産手続とは,債務者の財産等を清算する裁判手続のことをいいます
要するに,破産手続きとは,破産した債務者の財産を換価処分して金銭化し,それを債権者に弁済または配当するという手続です。
具体的には,裁判所が選任した破産管財人によって,債務者の財産は破産財団という形で管理されます。そして,その破産財団に所属する財産は換価処分され,債権者に対して公平に配当されることになります。
※なお,換価処分できる財産が無いことが明かな場合などには,破産管財人が選任されず,破産手続の開始と同時に破産手続が廃止により終了となること(同時廃止)もあります。
個別の強制執行手続の場合,債務者の総財産または個別の財産が換価処分され,特定の債権者に配当されることになります。
これに対して,破産手続きでは,すべての債権者を対象として,そのすべての債権者に公平に配当されることになります。
倒産状態に陥った債務者に対して個別の強制執行を認めると,場合によっては,早い者勝ちになり,時期を逸してしまった他の債権者は大きな不利益を被って,公平に反するおそれがあります。
そこで,すべての債権者が参加して公平な分配が可能となるように,破産手続という制度が設けられているのです。
また,倒産状態に陥った債権者の財産を債権者に配分することによって,各債権者の債権を多少なりとも満足させるというだけでなく,その財産を債権者が利用できるようにすることによって,社会的な生産性も確保できるというメリットが破産手続きにはあるといわれています。
もちろん,債務者にとっても,破産手続およびそれと付随して行われる免責手続を経ることによって,債務の負担から解放されるというメリットがあります。
特に,個人(自然人)の破産の場合には,その個人が経済的更生を図れるようにするという重要な目的もあります。
>> 破産法とは?
破産手続の仕組み
前記のとおり,破産手続は,債務者の財産を換価処分して金銭化し,それを各債権者に弁済または配当するという手続です。
破産手続きが開始されると,その時点で破産者が有していた財産は,破産管財人によって管理されるようになります。この破産管財人によって管理される破産者の財産のことを破産財団といいます。
破産者の財産が,破産管財人によって,破産財団という形でまとめて管理されるようになるということです。
個人破産の場合には,破産者の経済的更生を図るために,自由財産といって,換価処分しなくてもよい,つまり破産財団に組み入れられない財産もあります。
債務者の有する財産は,自由財産を除いて破産財団に組み入れられますが,破産者が有しているだけで,もともと破産者の財産ではなかったという場合もあり得ます。
このような場合には,取戻権によって,その財産の本当の権利者は,破産財団からその財産を取り戻すことができます。
また,破産財団の中には,担保権が設定されているものもあります。
破産者に対する破産債権が被担保債権となっている場合,担保権者は,破産手続外で担保権を実行して,優先的に弁済を受けることができます。これを別除権といいます。
このように破産財団は,自由財産,取戻権・別除権の行使によって,減少していきます。最初に集められた破産者の財産から,少しずつ財産が外へ出て行くというイメージです。
もっとも,減少するばかりではありません。破産管財人の調査によって,新たに財産が発覚することもあります。そうなれば,破産財団は増殖していきます。
加えて,本来ならば破産財団に組み入れられていたはずであるのに,何らかの事情により,破産者以外のところに財産が移転していたという場合もあるでしょう。
この場合には,破産管財人は,否認権を行使することで,その破産者以外の人が有している財産を破産財団に組み入れることができます。
破産者の財産の発見・回収や否認権行使などは,先ほどの取戻権等とは逆に,破産財団の外にあった財産が,破産財団の中へと入ってくるというイメージです。
このようにして,もともとの債務者の財産は,増減を経て破産財団を形成していくことになります。この過程が,破産手続の中心的な手続です。
そして,破産財団が確定すれば,債権者に弁済や配当がなされることになります。
破産者,破産債権者の行為の制限
前記のとおり,破産手続は,債権者に弁済または配当すべき破産財団を形成していくことが手続の中心となります。
しかし,破産財団を適切に形成する前に,各債権者が先走って破産者の財産を回収したり,破産者が勝手に特定の債権者にだけ弁済してしまったりすると収拾がつかないことになっていまいます。
破産財団を適切に確保するためには,このような債権者・破産者の行為を止めておく必要があります。
そこで,破産者が支払不能となった後は,原則として債権者は個別に債権回収行為をすることができず,債務者の方も不公平な弁済をすることができなくなるということになっています。
これを,講学上,支払不能の拘束力などと呼ぶ場合もあります。
具体的には,上記のような債権者や破産者の行為が,否認権行使の対象となったり,個人の破産であれば免責不許可事由となったりするということです。場合によっては破産犯罪として処罰されることもあります。
上記のような個別の債権回収行為や弁済の停止等によって,破産者や破産債権者の行為を適切に制限することも,破産手続きの重要な役割であるといえます。
このように,破産手続は,破産者や破産債権者等の独りよがりな行動を制限しつつ,破産財団を本来あるべき姿へと整えていく手続であるといえます。
そして,このようにして整えられた破産財団所属の財産を換価処分して,それによって得た金銭を破産債権者へと配当するのが,破産手続きの最終的なゴールとなります。
清算しきれなかった債務の取扱い(免責手続)
では,破産手続きによって資産を処分したお金で支払っても払いきれなかった部分は,どうなるのでしょうか?
法人が破産すると,破産手続が終了した時にその法人自体が消滅します。そして,法人自体が消滅するため,法人が背負っていた債務もすべて消滅します。
これに対して,個人(自然人)が破産した場合,破産したからといってその破産者個人が消滅するわけではありません。したがって,債務が当然に消滅するということもありません。
そこで,個人の破産の場合には,破産手続とは別に免責手続という手続きが用意されています。
破産手続とは別に免責手続を行い,その免責手続において裁判所から免責許可決定を受けることによって,個人が背負っていた債務の支払義務がなくなります。
つまり,破産手続きによって資産を失う代わりに,全資産をもってしても支払いきれなかった部分は,免責手続によって,もう支払わなくてよくなるということです。
そのため,個人破産の場合には,破産手続と免責手続の2つの手続は,一体のものとして進められるのが通常です。
自己破産と債権者申立て
この破産手続を債務者自身が申し立てることを「自己破産」といいます。破産手続のほとんどが,この自己破産です。
他方,債権者が,債務者の破産手続きを申し立てることを「債権者破産申立て」といいます。予納金が高額となる場合もあるため,実際には,それほど多くはありません。
>> 自己破産とは?
管財手続と同時廃止手続
これまで述べてきたように,破産手続では,裁判所によって選任された破産管財人が債務者の財産を換価処分していくのが原則的形態です。この原則的形態を「管財手続」と呼んでいます。
ただし,破産手続開始の時点で,破産管財人によって調査をするまでもないほどに,換価処分できる財産が無いことが明かな場合もあります。
そのような場合には,破産管財人は選任されず,破産手続きの開始と同時に破産手続が廃止により終了となることがあります。これを「同時廃止」と呼んでいます。
破産手続には,破産管財人が選任される「管財手続」と,例外的に破産管財人が選任されない「同時廃止手続」があるのです。
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