免責不許可事由があると同時廃止にならないのか?
免責不許可事由がある場合,または,免責不許可事由の存在が疑われる場合には,免責を許可して良いかどうかに関する事情を調査するため,同時廃止ではなく,管財手続になることがあります。
ここでは,免責不許可事由がある場合には同時廃止にならないのかについてご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
同時廃止の要件
破産法 第216条 第1項
裁判所は,破産財団をもって破産手続の費用を支弁するのに不足すると認めるときは,破産手続開始の決定と同時に,破産手続廃止の決定をしなければならない。
破産法第216条第1項によれば,自己破産の手続において同時廃止となるのは,破産財団をもって破産手続費用を支弁するのに不足すると認める場合であるとされています。
要するに,破産者が持っている財産を換価処分しても,破産手続の諸費用すら支払えないことが明らかな場合には,同時廃止となるということです。
しかし,実際には,これだけでは同時廃止とはなりません。実務では,上記のような財産がないことが明らかなことに加え,免責不許可事由が無いことが明らかな場合にはじめて同時廃止となるとされています。
免責不許可事由がある場合
破産法 第251条 第1項
裁判所は,破産管財人に,第252条第1項各号に掲げる事由の有無又は同条第2項の規定による免責許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情についての調査をさせ,その結果を書面で報告させることができる。
破産法には,免責不許可事由が無い場合に同時廃止となる,とは一言も書かれていません。
しかし,上記条文のとおり,実務では,第252条第1項各号に掲げる事由の有無,つまり,免責不許可事由があるかどうかの調査も破産管財人が行うのが通常です。
また,上記条文によれば,第252条第2項の規定による免責許可の決定をするかどうかの判断に当たって考慮すべき事情,つまり,裁量免責をしてよいかどうかの判断材料についての調査も,破産管財人が行うことになります。
破産手続では管財手続が原則であるにもかかわらず,同時廃止という制度が用意されているのは,破産管財人を選任して調査を行わせる必要が無い場合にまで,管財手続とするのは,無駄だからです。
そうすると,例え破産手続費用を支払うだけの財産が無いことが明らかであったとしても,免責不許可事由があるのならば,破産管財人による調査を行わせる必要があるのですから,同時廃止とすることはできないということになります。
そのため,免責不許可事由がある場合には,管財手続が選択されるのです。
>> 免責不許可事由とは?
免責不許可事由がないことが不明な場合
では,免責不許可事由があるとはいえないけれども,無いとも言い切れないような場合はどうなるのでしょうか?
この場合は,そもそも免責不許可事由があるのかどうかについて,破産管財人による調査が必要となりますから,やはり,同時廃止ではなく,管財手続となってしまいます。
免責不許可事由と同時廃止の関係まとめ
免責不許可事由があるかどうかを調査する必要がある場合,又は,免責不許可事由があることを前提に,裁量免責を与えてよいかどうかを調査する必要がある場合には,管財手続が選択されます。
ということは,同時廃止となるのは,上記のような免責調査が不要であることが必要ということになります。すなわち,同時廃止となるためには,免責不許可事由が無いことも明らかな場合でなければならないということです。
無論,破産手続費用を支払うだけの財産がある場合(否認権行使によって財産が回収できるも含みます。)には管財手続となります。
したがって,結局,同時廃止となるのは,破産者に破産手続費用を支払うだけの財産がないことが明らかで,かつ,免責不許可事由が無いことも明らかな場合であるということになるのです。
免責不許可事由と同時廃止の判断に関連する記事
- 自己破産申立てに強い弁護士をお探しの方へ
- 弁護士による自己破産申立ての無料相談
- 自己破産申立て(個人)の弁護士費用
- 自己破産(個人)の記事一覧
- 自己破産にはどのような手続があるのか?
- 自己破産における同時廃止事件とは?
- 自己破産において同時廃止になるのはどのような場合か?
- 破産財団による破産手続費用の支弁不足とは?
- 否認権行使の可能性がある場合でも同時廃止になるのか?
- 33万円以上の現金がある場合でも同時廃止になるのか?
- 東京地裁の換価基準は同時廃止の判断に影響を及ぼすか?
- 不動産を所有している場合でも同時廃止になることがあるのか?
- 個人事業主・自営業者の自己破産でも同時廃止になるか?
- 自己破産における同時廃止手続の流れ
この記事がお役に立ちましたらシェアお願いいたします。
自己破産のことならLSC綜合法律事務所にお任せください
自己破産申立てに強い弁護士をお探しの方がいらっしゃいましたら,債務整理のご相談実績2500件以上,自己破産申立て300件以上,東京地方裁判所立川支部で破産管財人実績もある,東京 多摩 立川の弁護士 LSC綜合法律事務所にご相談・ご依頼ください。
自己破産のご相談は「無料相談」です。まずはご相談ください。
※なお,お電話・メールによるご相談は承っておりません。弊所にご来訪いただいてのご相談となりますので,あらかじめご了承ください。
LSC綜合法律事務所
所在地
〒190-0022東京都立川市錦町2丁目3-3 オリンピック錦町ビル2階
ご予約のお電話
042-512-8890
代表弁護士 志賀 貴
日本弁護士連合会:登録番号35945(旧60期)
所属会:第一東京弁護士本部および多摩支部
>> 日弁連会員検索ページから確認できます。
アクセス
最寄駅:JR立川駅(南口)・多摩都市モノレール立川南駅から徒歩5~7分
駐車場:近隣にコインパーキングがあります。