特定調停にはどのくらい費用がかかる?本当に利用して良い?

債務整理を検討しているもののどうしても弁護士・司法書士に払う費用が用意できない、という方がよく検討するのが特定調停です。
弁護士・司法書士に依頼しないで行える特定調停には、実は大きなデメリットもあり注意が必要です。
このページでは、特定調停にかかる費用と、かかる費用が安いからといって本当に利用して良いのかについてお伝えします。

目次

特定調停とは

特定調停とはどのような手続きなのでしょうか。

特定調停とは

特定調停とは、借金問題について簡易裁判所で行われる調停で、従来の契約条件よりも返済内容を軽くする債務整理方法です。
借金をした場合、貸主である債権者と借主である債務者は金銭消費貸借契約を結び、その契約内容に従って返済が行われます。
特定調停は、この契約内容について、より返済が軽くないように調停で合意をするものです。

特定調停の特徴

特定調停の特徴は、基本的には任意整理のように、債権者と個別に返済内容について合意をするものなので、任意整理のように連帯保証人がついる債務や担保がついている債務については除外することができます。
また、弁護士・司法書士に依頼して行うことを前提としていないので弁護士・司法書士に対する費用の支払いが不要であることも特徴です。

特定調停の手続きにかかる費用

特定調停の手続きにかかる費用としては次のものが挙げられます。

申立手数料

簡易裁判所に調停を申し立てる手続きですので、申立手数料がかかります。
申立手数料は、交渉する債権者1社につき500円で、作成した申立書に収入印紙を貼り付けつ形で納付します。
仮に3社と特定調停をする場合には1,500円がかかります。

予納郵券

裁判所が通知のために使う切手(郵券)をあらかじめ納める必要があります。
裁判所によって運用が異なりますが、おおむね400円~1,500円程度です。
東京簡易裁判所では432円分(84円×4枚、10円×9枚、2円×3枚)を用意します。

その他の費用

特定調停の申立てにあたって、添付書類を取得するのに費用がかかります。
例えば、相手が法人である場合には、資格証明書(商業登記簿謄本)を添付する必要がある場合があり、その費用がかかります。

特定調停にかかる弁護士・司法書士費用

特定調停にかかる弁護士・司法書士費用はいくらくらいでしょうか。

基本的には特定調停は弁護士・司法書士に依頼しないで行う

上述した通りですが、特定調停は弁護士・司法書士に依頼しないで、自分で裁判所に申し立てをして行う手続きです。
そのため、基本的には弁護士・司法書士に依頼しないため、弁護士・司法書士に対する費用の支払いも行われません。

例外的に弁護士が特定調停を利用するケースとその場合の費用

もっとも、例外的に弁護士・司法書士が特定調停を利用するケースがあります。
弁護士・司法書士が特定調停を申し入れると、通常貸金業者は交渉に応じます。
しかし、中には任意整理に非協力的で、特定調停の申し入れをしてもこれに応じてこない貸金業者もあります。
また、借り入れをしてからわずかしか期間が経っていないなどで、通常であれば任意整理に応じる貸金業者もケースによっては任意整理に応じないこともあります。
このような場合に特定調停を利用して交渉を行うことが試みられます。
この場合には弁護士・司法書士には任意整理を依頼しているのが前提になるので、任意整理を依頼するための費用がかかります。

特定調停の落とし穴!債務整理は専門家に相談すべき

特殊なケースで弁護士・司法書士が特定調停を使う場合以外は、自分で行うことになり、手続き自体も非常に安価で行うことができます。
しかし、特定調停自体には次のような落とし穴もあるので、利用する際には注意をしましょう。

本当に特定調停が適切かどうかの判断は難しい

債務整理をする場合、その人の借金の額と返済能力などに応じて適切な方法を採ることが望ましいです。
他の任意整理・自己破産・個人再生をする場合には、まず弁護士・司法書士に相談をして行うことになるので、適切な手続きの選択が可能となります。
しかし、特定調停を行う場合には、特に相談せずに自分で判断をして裁判所に申立てをすることになります。
自分で判断をする場合、非常に楽観的であることが多く、実際には自己破産や個人再生を行うのが適切であるにも関わらず、特定調停も申し立ててしまい、後から返済ができなくなるということも珍しくありません。

特定調停で常に有利な判断を貰えるとは限らない

特定調停で常に有利な判断を貰えるとは限りません。
特定調停では、金銭問題に詳しい民間から選ばれる調停委員が、合意に向けての間を取り持つ形になります。
通常の任意整理のように、利息や遅延損害金がかからないような形で合意ができれば良いのですが、調停委員が常に債務者の味方に立ってくれるとは限りません。
そのため、有利な判断を貰えずに、通常の任意整理以上の支払いで話し合いを主導される可能性があります。

債務名義をとられるのですぐに強制執行ができる

任意整理と同様の効果を得ることができるのですが、調停という手続き形式をとることから、債務名義をとられるというデメリットがあります。
調停によって合意がされると、合意内容は調停調書として書面化されます。
この調停調書があると、万が一支払えなくなった場合に、すぐに強制執行をすることができます。
任意整理の場合には通常は強制執行をすることができる書類を作成しませんので、支払えなくなった場合でもまずは訴訟を起こしてから強制執行をすることになります。
支払えなくなった場合には再度債務整理をすることになるのですが、特定調停を使って支払えなくなった場合には、再度債務整理をするために時間の余裕が無いことになります。

同じような効果である任意整理の弁護士・司法書士費用の確認

以上のようなデメリットがあるので、基本的には任意整理をすることをお勧めしています。
任意整理を依頼するための費用の相場は次のようになります。
相談料:0円~30分5,000円
着手金:2万円~5万円
解決報酬金:0円~2万円
成功報酬:0円~減額した分の10%
なお、着手金が5万円である場合、3社の任意整理を依頼した場合には15万円の弁護士・司法書士費用を支払わなければならないことになります。
通常、債務整理を必要としている人は、このような高額な費用の支払いをすることができないことが多いです。
そのため、多くの弁護士・司法書士は、依頼を受けた上で費用は分割とすることを認めています。
依頼をしてしまえば、貸金業者への返済をストップすることができるので、その分を弁護士・司法書士への支払いに回せるため、無理なく任意整理を依頼することが可能となっています。

まとめ

このページでは特定調停の費用についてお伝えしました。
特定調停の費用については、1社あたり1,000円前後で申し立てることができるのですが、特定調停を利用するのが本当に適切な場面かの弁護士・司法書士の判断がなかったり、強制執行をすぐに行える状態になることなどのデメリットがあります。
そのため、同じ効果が生じる任意整理を弁護士・司法書士に依頼することをお勧めします。

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この記事を書いた人

神奈川大学法学部法律学科卒
2007年旧司法試験短答式・行政書士試験合格
2007年より法律事務所で勤務債務整理事務に従事
2018年より法律系を中心に解説記事の執筆をはじめる
相続・FX・旅行やグルメなども得意分野

債務整理に従事した経験から弁護士・司法書士に依頼する人の不安をなくしたいと考えています。

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