債務整理の受任通知後に,貸金請求の訴訟を起こされるという場合があります。ここでは,この受任通知後に貸金請求訴訟を起こされる場合はあるかについてご説明いたします。
受任通知
債務整理には,自己破産・個人再生・任意整理などの手続がありますが,いずれの手続をとるにせよ,まずはじめに各債権者に対して受任通知(介入通知)を送付するのが通常です。
この受任通知を送付すると,貸金業者や債権回収会社からの直接の取り立てが停止することになります。
受任通知後の貸金訴訟の提起
近時,債務整理の受任通知送付後であっても,貸金業者等が,借金など貸金の返還を求めて訴訟を提起してくるという場合が多くなってきています。
受任通知を送付すると取り立てが停止されるのは,貸金業法等の法律に基づく効果です。そうすると,訴訟を提起することも,これらの法律に基づく受任通知送付の効果に違反するもののように思えます。
しかし,上記各法律によって取立てが禁止されるのは,債務者の方の生活の平穏を取り戻させるためです。したがって,禁止されるのは,そのような生活の平穏を害するような債務者に対する直接の取立てだけです。
つまり,債権者である貸金業者や債権回収会社が,訴訟を提起して債権の回収を図ることまでは禁止されていないということになるます。そうしないと,これらの債権者は債権回収の手段を失ってしまうからです。
したがって,受任通知送付後であっても,債権者が貸金請求の訴訟を提起することは許されるということになります。
もっとも,実際には,受任通知後に訴訟を提起してくるという貸金業者等は限られていますし,また,そのような業者であっても,受任通知後それなりの期間を経過してから提起してくるというのが通常です。
受任通知後の貸金訴訟が不法行為となる場合
前記のとおり,受任通知送付後に,貸金業者等が訴訟などの裁判手続を利用して債権回収を図ることは,違法とはならないのが原則です。
もっとも,債務整理手続は,債権者間の公平を図るとともに債務者の経済的更生を図るために行われる手続です。したがって,受任通知後に訴訟を提起されてしまうと,債権者の公平を害したり,債務者の経済的更生を害するおそれがあります。
そこで,例外的にではありますが,受任通知後に貸金請求の裁判を提起すること自体が不法行為として認められるという場合がないわけではありません。
ただし,前記のとおり,債権者の権利として受任通知後に裁判を提起することは原則として許されていますので,不法行為となる場合は非常に限定されてはいます。
例えば,受任通知を受領したにもかかわらず取引履歴も開示せず,しかも,受任通知受領後すぐに訴訟を提起した場合など,極めて悪質な場合などです。



