一部の債権者だけ任意整理できるか?
複数の債権者がいる場合,すべての債権者を対象として任意整理をするのが原則です。ここでは,一部の債権者だけ任意整理できるのかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。
(著者 : 弁護士 志賀 貴 )
債権者平等の原則との関係
例えば,債権者として消費者金融A社,住宅ローンを借りているB銀行,友人のCさんがいたとします。
こういう場合に,A社からの借金だけ任意整理をして,B銀行やCさんは普通に支払っていくという方法をとることができるのでしょうか?
この点,任意整理も,裁判手続ではないとはいえ,倒産手続の一種です。そのため,債権者平等の原則が妥当します。
債権者平等の原則とは,すべての債権者を平等に扱うという意味です。
一部の債権者だけ任意整理をし,その他の債権者については任意整理をしないということになると,任意整理をした債権者だけは,約定どおりの返済を受けられなくなるのに,その他の債権者は約定どおりの返済を受け続けることができるということになり,債権者平等に反する可能性があります。
そのため,原則として,任意整理においても,すべての債権者を対象として任意整理をすべきということになります。
もっとも,任意整理はあくまで私的な交渉です。したがって,任意整理の場合には,一部の債権者のみを対象とするということも可能です。
この場合,A社だけに弁護士等が介入し,交渉をしてその借金について和解をすることになります。もっとも,いつでもできるというわけではありません。
返済の原資との関係で,全社まとめて任意整理を行わないと,各社の返済金額を調整できないという場合こともあります。
上記の例で,月々返済可能な金額が5万円だったとして,B銀行とCさんへの返済が5万円以上だったとすると,もはやA社の借金だけを任意整理することは不可能です。
そこで,任意整理の場合であっても,一部の債権者だけを対象とするということは常に可能なわけではなく,一定の制限はあるといってよいでしょう。
>> 任意整理とは?
法的整理手続との関係
一部債権者のみ任意整理をした場合,自己破産や個人再生をする場合において不利益を生ずる可能性があります。
特に,任意整理をした債権者から過払い金が返還された場合が,最も不利益を生ずる可能性が高くなります。
例えば,過払い金が発生する見込みのある貸金業者またはすでに完済していて過払い金返還しかないという貸金業者のみを対象とし,その他債務が残る債権者は対象としないで任意整理をしたとします。
この場合に,過払い金回収後,任意整理をしなかった債権者への返済ができなくなり,自己破産や個人再生をする必要が出てくるという場合があります。
しかし,過払い金は,自己破産や個人再生においては資産として扱われます。完済した貸金業者から過払い金の返還を受けた場合も同様です。
資産として扱われるということは,自己破産においては,債権者への配当の原資となるということですし,個人再生においては,清算価値保障原則から返済金額に影響してくるということになります。
ところが,すでにその過払い金を使い切ってしまっていたとすると,配当原資に充てることができなくなってしまいます。
これは,配当すべき財産を処分してしまったということで,免責不許可事由となる場合があります。
また,過払い金を親族等への返済に使ってしまっていたような場合には,破産管財人がその親族に対して,否認権を行使して,支払った金銭の返還を請求するというような事態になるおそれもあります。
個人再生の場合も,免責不許可事由はありませんが,上記否認権行使の問題が生ずることはあります。また,過払い金が高額である場合,清算価値に加えられて返済金額が大きくなることもあります。
その際,過払金が残っていれば,それを返済に充てればよいでしょうが,もし残っていなければ高額の返済をしていかなければならなくなります。
その返済が難しいと裁判所が判断すれば,個人再生が認可されなくなるということもあり得るのです。
現に,一部債権者のみ任意整理をした結果,上記のような不利益を生じてしまい問題となるケースが少なからずあったため,日本弁護士連合会(日弁連)では,「債務整理事件処理の規律を定める規程」を制定し,原則として,一部債権者だけ(特に過払いとなっている貸金業者だけ)任意整理をすることはできないものと定めています。
したがって,収支からみて返済原資が十分にあり,一部債権者だけしか任意整理をしなかったとしても,返済が滞ることはないと認められるような場合でなければ,一部債権者だけ任意整理をすることはできないということになります。
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