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債務整理(全般)

最二小判平成16年2月20日(平成15年(オ)第386号)

みなし弁済の適用を否定した判例として,最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日判決(平成15年(オ)第386号)があります。ここでは,この最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日判決(平成15年(オ)第386号)についてご説明いたします。

過払い金返還請求とみなし弁済

かつて,貸金業法には「みなし弁済」という制度がありました。これは,利息制限法所定の制限利率を超える利息を受領したとしても,一定の要件を満たす限り,それを有効な弁済として扱うという制度です。

現在ではすでに廃止されていますが,このみなし弁済は,貸金業者に極めて有利,消費者側に極めて不利な制度でした。

このみなし弁済の適用を否定した判例が,最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日・平成15年(受)第386号です。

この最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日・平成15年(受)第386号は,みなし弁済の適用について,3つの問題について判断をしています。

3つの問題とは,利息の天引きの場合にもみなし弁済があるのか,みなし弁済の要件である17条書面の交付,同じくみなし弁済の要件である18条書面の交付の3つの問題です。

※なお,同日に同じ第二小法廷から,別途,みなし弁済に関する最高裁判所第二小法廷平成16年2月20日(平成14年(受)第912号)が出されています。

利息の天引きにおけるみなし弁済の適用

利息の天引きに関するみなし弁済の適用について,最二小判平成16年2月20日・平成15年(オ)第912号は,以下のとおり判示しています(以下の引用は抜粋。)。

利息制限法2条は,貸主が利息を天引きした場合には,その利息が制限利率以下の利率によるものであっても,現実の受領額を元本として同法1条1項所定の利率で計算した金額を超える場合には,その超過部分を元本の支払に充てたものとみなす旨を定めている。そして,法43条1項の規定が利息制限法1条1項についての特則規定であることは,その文言上から明らかであるけれども,上記の同法2条の規定の趣旨からみて,法43条1項の規定は利息制限法2条の特則規定ではないと解するのが相当である。

したがって,貸金業者との間の金銭消費貸借上の約定に基づき利息の天引きがされた場合における天引利息については,法43条1項の規定の適用はないと解すべきである。これと異なる原審の前記3(1)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

上記判決の原文(裁判所HPから)

利息の天引きとは,お金を貸し出すときに,将来発生する利息分をあらかじめ差し引き,その残額を貸し出すというやり方のことをいいます。

例えば,100万円を貸し出す際,利息が10万円だったとすれば,その10万円を差し引いた90万円を貸し出すということです。

この利息の天引きに関しては,そもそも貸付金全額の交付がないので,全額の貸付けとはいえないのではないか,つまり,上記の例で言えば,90万円の貸付けとしかいえないのではないかという論点もありますが,それはとりあえずおくとして,この判例は,天引きされた利息についてみなし弁済が適用されるのかという点についての判断をしています。

上記判例は,みなし弁済の規定は利息制限法第1条第1項の特則ではあるけれども同条第2項の特則というわけではないから,利息の天引きがなされた場合の天引き利息についてはみなし弁済の適用はない,と判断しました。


どういう意味かと言うと,利息制限法第1条第1項は「金銭を目的とする消費貸借上の利息の契約は,その利息が左の利率により計算した金額をこえるときは,その超過部分につき無効とする。」として,その制限超過となる基準について規定しています。

他方,みなし弁済の規定は,上記条項に定められているように,本来なら制限超過部分を超える利率の利息の約定は無効となるはずなのに,例外的に,みなし弁済が成立する場合には無効とならないと定めています。

つまり,みなし弁済の規定は制限超過部分を無効とする利息制限法第1条第1項の例外規定,つまり特則であると言えます。

利息制限法第1条第2項はどのように規定しているかというと,「債務者は,前項の超過部分を任意に支払つたときは,同項の規定にかかわらず,その返還を請求することができない。」と定めています。

文言だけ見ると,この第2項の規定にもみなし弁済の規定に関連があるかのように思えますが,この第2項は,利息の支払いが無効である場合には適用されないと解釈されています。

そうすると,第2項は無効な利息の支払を認めるものではないので,無効である利息の支払いを例外的に有効としてしまうみなし弁済の規定を認めた規定ではないと考えることができます。

そのため,みなし弁済の規定は同条項の規定とは関連がないものであり,したがって,同条項の特別規定ではないと判示しました。

つまり,みなし弁済の規定は,一定の要件を満たす限りで制限超過部分の利息の支払いを有効とみなすものにすぎず,2項の任意の支払いの範囲を拡大して認めるものではないから,利息の天引きであっても,みなし弁済の要件を満たさない制限超過部分が有る以上は,その部分は無効であることには変わりない,と判断したということです。

そして,利息の天引きは単に貸金業者の都合で勝手に利息を天引きしたものにすぎず,みなし弁済の要件である任意の支払いとは到底いえないので,天引き利息については,まったくみなし弁済は適用されず,天引き利息のうちの制限超過部分の支払いは無効であるということになります。

そうすると,みなし弁済の規定はあくまで第1項の特則にすぎないのですから,利息の天引きが第2項の特則でない以上,制限超過部分の支払いがなされている以上はその部分の支払いは無効であることに変わりなく,したがって,その無効となる部分については,やはり不当利得となると考えてよい,ということになるのです。

要するに,利息天引きがなされた場合,(みなし弁済が適用されない結果)その天引き利息の中に制限超過部分があるときは,それは過払金となり,元本に充当されるか又は過払金として返還しなければならないと判示したということです。

17条書面の交付に関する判断

17条書面の交付について,最二小判平成16年2月20日・平成15年(オ)第912号は,以下のとおり判示しています(以下の引用は抜粋。)。

法43条1項は,貸金業者が業として行う金銭消費貸借上の利息の契約に基づき,債務者が利息として任意に支払った金銭の額が利息の制限額を超え,利息制限法上,その超過部分につき,その契約が無効とされる場合において,貸金業者が,貸金業に係る業務規制として定められた法17条1項及び18条1項所定の各要件を具備した各書面を交付する義務を遵守したときには,利息制限法1条1項の規定にかかわらず,その支払を有効な利息の債務の弁済とみなす旨を定めている。貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)と,上記業務規制に違反した場合の罰則(平成15年法律第136号による改正前の法49条3号)が設けられていること等にかんがみると,法43条1項の規定の適用要件については,これを厳格に解釈すべきものである。

法43条1項の規定の適用要件として,法17条1項所定の事項を記載した書面(以下「17条書面」という。)をその相手方に交付しなければならないものとされているが,17条書面には,法17条1項所定の事項のすべてが記載されていることを要するものであり,その一部が記載されていないときは,法43条1項適用の要件を欠くというべきであって,有効な利息の債務の弁済とみなすことはできない。

上告人は,原審において,平成7年5月19日に被上告人との間で本件基本契約を締結した際に,被上告人に対し,根抵当権設定に必要な書類を提出した旨の主張をしており,仮に,この主張事実が認められる場合には,その担保の内容及び提出を受けた書面の内容を17条書面に記載しなければならず(平成12年法律第112号による改正前の法17条1項8号,平成12年総理府令・大蔵省令第25号による改正前の貸金業の規制等に関する法律施行規則13条1項1号ハ,ヌ),これが記載されていないときには,法17条1項所定の事項の一部についての記載がされていないこととなる。ところが,原審は,上記主張事実についての認定判断をしないで,本件各承諾書写し,本件各借用証書控え,本件各債務弁済契約証書写し及び本件金銭消費貸借契約証書写しの交付により,本件各貸付けにつき法17条1項所定の要件を具備した書面の交付があったと判断したものであって,原審の前記3(2)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

上記判決の原文(裁判所HPから)

上記判例は,まず,貸金業者の業務の適正な運営を確保し,資金需要者等の利益の保護を図ること等を目的として,貸金業に対する必要な規制等を定める法の趣旨,目的(法1条)と,上記業務規制に違反した場合の罰則が設けられていることなどからすれば,みなし弁済の適用要件については,厳格に解釈しなければならないということを明らかにしています。

そして,その上で,17条書面には貸金業法17条1項所定の事項のすべてが記載されていなければならず,その一部でも記載されていないときは,みなし弁済は適用されないという判断を下しています。

すなわち,この最二小判平成16年2月20日・平成15年(オ)第912号は,みなし弁済の要件は特に厳格に解釈しなければならないから,その要件の1つである17条書面に関しても,貸金業法17条1項所定の記載事項をすべて完璧に記載したものを交付しなければ,17条書面を交付したとはいえない,というように厳格に解釈したのです。

18条書面の交付に関する判断

18条書面の交付について,最二小判平成16年2月20日・平成15年(オ)第912号は,以下のとおり判示しています(以下の引用は抜粋。)。

法18条1項は,貸金業者が,貸付けの契約に基づく債権の全部又は一部について弁済を受けたときは,その都度,直ちに,同項所定の事項を記載した書面(以下「18条書面」という。)をその弁済をした者に交付しなければならない旨を定めている。

本件各弁済は銀行振込みの方法によってされているが,利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,法18条1項の規定に従い,貸金業者は,この払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきである(最高裁平成8年(オ)第250号同11年1月21日第一小法廷判決・民集53巻1号98頁参照)。そして,17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに交付することを義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後にしなければならないものと解すべきである。

前記のとおり,上告人による本件各弁済の日から20日余り経過した後に,被上告人から上告人に送付された本件各取引明細書には,前回の支払についての充当関係が記載されているものがあるが,このような,支払がされてから20日余り経過した後にされた本件各取引明細書の交付をもって,弁済の直後に18条書面の交付がされたものとみることはできない(なお,前記事実関係によれば,本件において,その支払について法43条1項の規定の適用を肯定するに足りる特段の事情が存するということはできない。)。これと異なる原審の前記3(3)の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。

上記判決の原文(裁判所HPから)

この判例は,まず,最一小判平成11年1月21日を引用し,利息の制限額を超える金銭の支払が貸金業者の預金口座に対する払込みによってされたときであっても,特段の事情のない限り,法18条1項の規定に従い,貸金業者は,この払込みを受けたことを確認した都度,直ちに,18条書面を債務者に交付しなければならないと解すべきであることを確認しています。

そして,17条書面の交付の場合とは異なり,18条書面は弁済の都度,直ちに交付することを義務付けられているのであるから,18条書面の交付は弁済の直後にしなければならないものと解すべきであると判断しました。

その上で,支払がされてから20日余り経過した後にされた本件各取引明細書の交付をしたとしても,弁済後「直ちに」に18条書面の交付がされたものとみることはできないとして,みなし弁済の適用を否定しています。

上記判断は,要するに,制限超過部分の支払いが銀行振り込みの方法によってなされた場合であっても,貸金業者は,その払い込みを受けた都度18条書面を交付しなければならず,しかも,その交付の時期は,払い込みの直後になされなければならないと判示しました。

この判例は,払い込みの「直後」というのはどの程度の期間なのかについて,その具体的な期間については示していませんが,払い込みから20日経過後では遅いと判断しています。

もっとも,この20日間というのは,この判例の事件の交付時期が払い込みから20日後くらいになされた事件であったから挙げられているだけです。

直後の交付とは20日くらいを目安とする,というわけではありません。

むしろ,判例があえて「直後」という文言を使っていることからすると,払い込みから本当にすぐに,例えば,払い込みを確認してからすぐにという意味に捉えるべきでしょう。

したがって,期間としては,だいたい1日から,遅くとも2,3日くらいと捉えるべきだと思います。

その2,3日程度の間に18条書面が交付されていなければ,正式な18条書面の交付とは認められず,みなし弁済が成立するとはいえないということです。

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