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個人再生の申立て

給与所得者等再生の再生手続開始要件とは?

個人再生のうちの給与所得者等再生の再生手続を開始してもらうためには,民事再生法で定める再生手続開始の要件を満たしている必要があります。ここでは,給与所得者等再生の再生手続開始要件にはどのようなものがあるかについて,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

個人再生の手続と要件

個人再生には,小規模個人再生給与所得者等再生という2つの手続があります。

小規模個人再生は個人再生の基本類型です。これに対し,給与所得者等再生は,個人再生のうちでも給与所得者等に対してのみ認められる特別類型の手続といえます。

そのため,小規模個人再生を利用するための開始要件は,特別手続である給与所得者等再生においても必要となってきます。

つまり,小規模個人再生を利用するための開始要件は,給与所得者等再生にも共通しているということです。

もっとも,特別類型ですから,給与所得者等の再生手続開始の要件には,小規模個人再生にはない特有の要件もあります。

>> 給与所得者等再生とは?

民事再生全般共通の開始要件

民事再生法 第21条 第1項

債務者に破産手続開始の原因となる事実の生ずるおそれがあるときは,債務者は,裁判所に対し,再生手続開始の申立てをすることができる。債務者が事業の継続に著しい支障を来すことなく弁済期にある債務を弁済することができないときも,同様とする。

民事再生法 第25条

次の各号のいずれかに該当する場合には,裁判所は,再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
① 再生手続の費用の予納がないとき。
② 裁判所に破産手続又は特別清算手続が係属し,その手続によることが債権者の一般の利益に適合するとき。
③ 再生計画案の作成若しくは可決の見込み又は再生計画の認可の見込みがないことが明らかであるとき。
④ 不当な目的で再生手続開始の申立てがされたとき,その他申立てが誠実にされたものでないとき。

給与所得者等再生は個人再生手続の1つですが,そもそもこの個人再生手続は,民事再生手続を個人向けに簡易化した民事再生手続の特則です。個人民事再とも呼ばれます。

したがって,給与所得者等再生の手続を開始してもらうためには,個人再生特有の要件だけでなく,民事再生全般に共通する再生手続開始要件を満たしていることも必要となります。

民事再生共通の再生手続開始要件とは,以下のものです。

>> 民事再生共通の再生手続開始要件とは?

個人再生共通の開始要件

民事再生法 第221条 第1項

個人である債務者のうち,将来において継続的に又は反復して収入を得る見込みがあり,かつ,再生債権の総額(住宅資金貸付債権の額,別除権の行使によって弁済を受けることができると見込まれる再生債権の額及び再生手続開始前の罰金等の額を除く。)が五千万円を超えないものは,この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「小規模個人再生」という。)を行うことを求めることができる。

給与所得者等再生の開始決定を出してもらうための要件(開始要件)としては,前記民事再生共通の再生手続開始要件のほか,個人再生に特有の再生手続開始要件を満たしていることも必要となります。

前記のとおり,個人再生には小規模個人再生と給与所得者等再生がありますが,基本類型は小規模個人再生です。

そのため,給与所得者等再生においては,特有の要件もありますがそれだけでなく,基本類型である小規模個人再生の再生手続開始要件(小規模個人再生特有のものは除く。)も満たしていなければなりません。

つまり,小規模個人再生と給与所得者等再生には,共通する再生手続開始の要件があるということです。

個人再生特有の要件のうちで小規模個人再生と給与所得者等再生に共通する再生手続開始要件には,以下のものがあります。

>> 小規模個人再生・給与所得者等再生共通の再生手続開始要件

給与所得者等再生特有の開始要件

民事再生法 第239条

第1項 第221条第1項に規定する債務者のうち,給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者であって,かつ,その額の変動の幅が小さいと見込まれるものは,この節に規定する特則の適用を受ける再生手続(以下「給与所得者等再生」という。)を行うことを求めることができる。
第2項 給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述は,再生手続開始の申立ての際(債権者が再生手続開始の申立てをした場合にあっては,再生手続開始の決定があるまで)にしなければならない。
第3項 再生債務者は,前項の申述をするときは,当該申述が第221条第1項又は第244条において準用する第221条第3項に規定する要件に該当しないことが明らかになった場合に通常の再生手続による手続の開始を求める意思があるか否か及び第5項各号のいずれかに該当する事由があることが明らかになった場合に小規模個人再生による手続の開始を求める意思があるか否かを明らかにしなければならない。ただし,債権者が再生手続開始の申立てをした場合については,この限りでない。
第4項 裁判所は,第2項の申述が前項本文に規定する要件に該当しないことが明らかであると認めるときは,再生手続開始の決定前に限り,再生事件を通常の再生手続により行う旨の決定をする。ただし,再生債務者が前項本文の規定により通常の再生手続による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは,裁判所は,再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
第5項 前項に規定する場合のほか,裁判所は,第2項の申述があった場合において,次の各号のいずれかに該当する事由があることが明らかであると認めるときは,再生手続開始の決定前に限り,再生事件を小規模個人再生により行う旨の決定をする。ただし,再生債務者が第三項本文の規定により小規模個人再生による手続の開始を求める意思がない旨を明らかにしていたときは,裁判所は,再生手続開始の申立てを棄却しなければならない。
① 再生債務者が,給与又はこれに類する定期的な収入を得る見込みがある者に該当しないか,又はその額の変動の幅が小さいと見込まれる者に該当しないこと。
② 再生債務者について次のイからハまでに掲げる事由のいずれかがある場合において,それぞれイからハまでに定める日から7年以内に当該申述がされたこと。
イ 給与所得者等再生における再生計画が遂行されたこと 当該再生計画認可の決定の確定の日
ロ 第235条第1項(第244条において準用する場合を含む。)に規定する免責の決定が確定したこと 当該免責の決定に係る再生計画認可の決定の確定の日
ハ 破産法第252条第1項に規定する免責許可の決定が確定したこと 当該決定の確定の日

給与所得者等再生を利用するためには,前記の個人再生の共通要件のほかに,給与所得者等再生に固有の要件も満たしている必要があります。

すなわち,給与所得者等再生の固有の要件とは,以下の要件です。

  • 給与またはこれに類する定期的な収入を得る見込みがあること
  • 定期的な収入の額の変動の幅が小さいこと
  • 過去の給与所得者等再生の再生計画が遂行された場合の当該再生計画認可決定確定日,ハードシップ免責がされた場合の当該再生計画認可決定確定日,破産免責許可決定確定日から7年以内にされた申立てでないこと
  • 給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述をすること

給与等の変動幅の小さい定期的な収入があること

そもそも,給与所得者等再生は,サラリーマンなど比較的固定的な収入を得ている給与所得者などについては,返済を完遂できる可能性が高いことから,債権者の意向に左右されずに再生計画を認可するという手続です。

したがって,債権者の意向に左右されなくてもよいといえるほどの,固定的で安定した収入があるということが必要となってきます。

そのため,単に継続・反復して収入を得る見込みがあるというだけでなく,その収入が「給与またはこれに類する定期的な収入」で,かつ「定期的な収入の額の変動の幅が小さい」こと要求されています(民事再生法239条1項,5項1号)。

ちなみに,ここでいう収入額の変動の幅が小さいことについて,どのくらいの変動の幅までなら許されるのかというと,おおよそ変動率20パーセント程度を一応の目安とすると考えられています。

したがって,たとえば,ある月は30万円の給料があるけれども,次の月は10万円しか給料がないというような場合には,収入額の変動幅が大きいと判断されてしまうおそれはあります。

なお,この場合,賞与・ボーナスは考慮に入れないのが通常です。

給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述をしたこと

給与所得者等再生で個人再生を申し立てようという場合には,その申立ての際に,「給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述」をしなければなりません(民事再生法239条2項)。

個人再生の申立ては,再生手続開始の申立書という書面を裁判所に提出して行いますから,この申立書に,給与所得者等再生を行うことを求める旨の申述を記載しておくことになります。

なお,この申述の際に,給与所得者等再生の要件を満たさない場合には通常の民事再生に切り替えるてもらうことを求めるのか否か,小規模個人再生に切り替えてもらうことを求めるのか否かについての意思も明らかにしておかなければならないとされています(民事再生法239条3項)。

7年以内に給与所得者等再生の認可決定確定等がないこと

給与所得者等再生は,債権者の意向に左右されずに債務の減額等が認められる手続ですから,意向を反映できる小規模個人再生に比べて,債権者に与える不利益は大きな場合があります。

そこで,過去の一定期間内に,給与所得者等再生や破産など債権者に不利益を与えることが大きい手続においてすでに債務免責などの恩恵を受けていた場合には,政策的に,給与所得者等再生を利用できないものとしています。

具体的にいうと,給与所得者等再生の申立ての日からさかのぼって7年以内に以下のそれぞれの確定日がある場合には,給与所得者等再生の申立ては棄却されます(民事再生法239条5項2号)。

  • 過去に給与所得者等再生の開始を受けて,その再生計画が認可されて再生計画が遂行された場合は,当該再生計画認可決定確定の日
  • 過去に個人再生(小規模個人再生も含む。)の開始を受けて,その手続においてハードシップ免責がされた場合は,当該再生計画認可決定確定日
  • 過去に破産手続の開始を受けて,免責許可決定がされた場合には,当該免責許可決定確定日

給与所得者等再生の開始要件に関する注意点

以上が,給与所得者等再生の再生手続開始の要件です。これらの要件がすべて満たされていなければ,そもそも給与所得者等再生を利用することができません。

また,以上の要件をすべて満たし給与所得者等再生を利用できるとしても,当然に,再生計画が認可されるというわけではありません。

この再生計画認可のためには,さらに,前記の利用のための要件とは異なる認可の要件を満たしていなければなりません。

特に,給与所得等再生の場合,債権者の意向には左右されずに済みますが,最低でも可処分所得の2年分以上は返済しなければいけないという認可の要件があります。

場合によっては,この可処分所得の2年分というのは,かなり高額になってしまうおそれがあります。

その場合,安定収入があっても,そもそも返済金額に不足するということで,再生計画が認可されないというおそれも出てきます。

したがって,給与所得者等再生を利用しようという場合には,可処分所得の2年分がどのくらいの金額になるのかということも考慮しておく必要があるでしょう。

>> 給与所得者再生の再生計画の認可要件・不認可事由

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