個人再生の手続は,裁判所によって選任された個人再生委員が指導監督を行う場合があります。ここでは,この個人再生委員についてご説明いたします。
個人再生委員とは
個人再生の手続は,自己破産の場合と異なり,再生債務者自らが債権者と交渉し,再生計画案を立てるなどの手続を行っていかなければならない手続です。
しかし,再生債務者自らだけで手続を行うのは困難な場合がありますし,不正等により債権者の公平を害するという危険性もないわけではありません。そのため,第三者的な見地からの指導や監督が必要となってきます。
無論,個人再生の手続は,裁判所が監督することになりますが,個別具体的に手続をみていくためには,より再生債務者に密着して指導監督を行うのが望ましいでしょう。
そこで,個人再生の手続においては,裁判所によって「個人再生委員」が選任され,その個人再生委員が,裁判所は,個々の個人再生手続をその個人再生委員に指導監督させることができるものとされています。
通常の民事再生手続においても,裁判所によって選任された監督委員が再生手続を指導監督していますが,その個人再生版が,この個人再生委員です。
個人再生委員の選任
前記のとおり,裁判所は,個人再生手続の指導監督をさせるために,個人再生委員を選任することができます。
もっとも,民事再生法によれば,個人再生委員を選任するかどうかは,個々の事件に応じて裁判所が決定することができるとされています。つまり,個人再生委員を選任せずに個人再生手続を進めるという場合もあるということです。
しかし.個人再生委員を選任した方が,より客観的に手続を進めていけることは確かです。そのため,東京地方裁判所(立川支部も含む。)では,原則として,内容を問わず,全件につき個人再生委員が選任されるという運用がなされています。
個人再生委員は,弁護士等の個人再生手続に精通した者が選ばれることになります。実際には,弁護士以外の者が選ばれたという例はないようです。
東京地方裁判所本庁では,基本的に,23区内に所在する法律事務所に所属する弁護士のうちで,個人再生手続の申立てや破産管財人等の経験が多く,しかも,弁護士登録10年以上の弁護士が個人再生委員に選任されるという運用になっています。
東京地方裁判所立川支部でも,ほとんど同様に,多摩地区に所在する法律事務所に所属する弁護士のうちで,個人再生手続の申立てや破産管財人等の経験が多く,しかも,弁護士登録10年以上の弁護士が個人再生委員に選任されるという運用になっています。ただし,立川支部の場合には,23区内の弁護士が選任されるという場合もあります。
個人再生委員の役割・関与
前記のとおり,個人再生の手続は,基本的には,再生債務者が自ら進めていかなければなりません。したがって,個人再生委員が率先して,個人再生の各手続を行ってくれるというものではありません。
もっとも,再生債務者が個人再生手続を進めていくに当たって,重要となる手続の節目においては,個人再生委員の指導・監督がなされ,個人再生委員が裁判所に対して手続の進行について意見を述べるということになります。
この個人再生委員の意見は,裁判所の判断に重大な影響を及ぼします。むしろ,ほとんど決定的な影響を及ぼすといってもよいかもしれません。
個人再生を申し立てると,すぐに再生債務者と個人再生委員との打ち合わせ・事情の聴取が行われます。また,履行テストは,個人再生委員が管理することになりますので,個人再生委員が指定した銀行預金口座に,履行テストのための予納金を毎月振り込んでいくことになります。
個人再生委員は,事情聴取や履行テストの状況などをもとに,個人再生手続を開始すべきかどうかについての意見書を作成して裁判所に提出します。この意見書が,個人再生手続を解するかどうかに重大な影響を与えることになります。
また,裁判所の開始決定だけでなく,裁判所が最終的な再生計画の認可決定をするかどうかの判断においても,個人再生委員が提出する意見書が重大な影響を持ってきます。
このように,個人再生委員は,個人再生手続において,非常に重要な役割や関与を持っているのです。



