過払い金(過払金)返還請求には,現在でもいくつかの争点が残っています。ここでは,この過払い金返還請求の争点についてご説明いたします。
過払い金(過払金)返還請求の争点
過払い金返還請求といっても,解釈の問題を含む法的な紛争ですから,その請求が認められるかどうかについていくつかの争点があります。
現在では,引き直し計算をした上で過払い金がある場合には,貸金業者に対してその返還を請求できるというのは当たり前のようになっていますが,古くは,引き直し計算は有効なものかどうか,過払い金の返還を請求できるのかどうか,ということすらも1つの争点でした。
また,かつては,貸金業規制法にみなし弁済という制度がありました。これは,一定の要件を満たした場合には,利息制限法に違反する利息であっても過払い金として返還する必要がなくなるという制度ですが,最高裁判例によってその適用が実質的に否定された上,法律の改正によって制度自体が撤廃されたため,現在ではほとんど争点とはなっていません。
一部の業者はいまだにみなし弁済の適用を主張してくるところがありますが,今後も認められることはないでしょう。
その他にも多くの争点がありますが,そのうちの多くは最高裁判所の判例が出されてすでに争点とはいえなくなっているものもあります。
例えば,過払い金返還請求権の消滅時効の起算点については,最高裁判例によって取引終了時であるとされ,過払い金の利息の利率は年5%であるなどの判断も出されています。これらは,現在ではほとんど争われていないように思われます。
残された争点
現在でも残っている過払い金返還請求の争点としては,以下のようなものが主要な争点であると思われます。
まず,過払い金の利息,すなわち,悪意の受益者性です。最二小判平成21年7月10日以来,当該貸金業者が悪意の受益者に当たるかどうかという争点は,必ずと言ってよいほど貸金業者側から主張されるようになっています。悪意の受益者ではないと判断される裁判例は多くはありませんが,あることは確かです。今後,さらなる具体的な判断基準等を示す最高裁判例が出される可能性はあるでしょう。
次に,取引の分断・一連計算の争点があります。これは,同一業者との間の複数の取引を1つの取引として扱うことができるのかという問題です。一連の取引として引き直し計算をした場合と個別の取引として別々に引き直し計算のした場合とでは,過払い金の金額が大きく異なる(もちろん一連の場合の方が高額になることがほとんどです。)ことから,これについても頻繁に争われます。
残高無視計算や推定計算の問題もあるでしょう。貸金業者から取引履歴の一部または全部が開示されない場合に,開示された取引履歴の当初残高を0円として引き直し計算をしたり,あるいは,その他の証拠を基にして推定で取引経過を再現して引き直し計算をしたりするなどの方法がとられることがありますが,これも,その内容の信用性や合理性について争われることになるでしょう。
上記の争点は,どの貸金業者も主張してくる争点ですが,その他にも特定の場合に主張されるような争点があります。
例えば,債権譲渡の問題です。貸金業者からその他の貸金業者に対して,貸金債権が譲渡されるということがあります。この場合に譲渡業者との取引の段階で過払い金がすでに発生していたという場合に,譲受業者に対して,譲渡業者との取引で発生していた過払い金も含めて過払い金の返還を請求することができるのかという問題です。これは,各業者によって事情が異なってきますが,近時,いくつか最高裁判例が出され始めています。
また,大半の貸金業者は主張してこないのですが,ごく一部の業者が主張してくるものとして,取引途中における期限の利益喪失の主張などもあります。



