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過払い金返還請求

悪意の受益者に関する平成23年12月の3つの最高裁判例

最高裁判所第一小法廷は,過払い金の利息について,平成23年12月に3つの判決を出しました。ここでは,この悪意の受益者に関する平成23年12月の3つの判例について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

平成23年12月の3つの判決

平成23年12月に,過払い金の利息の問題について,新たに3つの最高裁判所の判決がなされました。

これら3つの判決は,貸金業者がCFJ,プロミス,アコムとそれぞれ異なっていますが,争点や判断の枠組みはほとんど同じです。

3つの判決とは,以下の3つの判決です。

前提となる知識

3つの判例は,いずれも,リボルビング方式の貸付の場合,どのような場合に過払い金の利息が発生するのか,つまり,どのような場合に貸金業者が悪意の受益者と言えるのかということを判断したものです。

最二小判平成19年7月13日によれば,「貸金業者が制限超過部分を利息の債務の弁済として受領したが,その受領につき貸金業法43条1項の適用が認められない場合には,当該貸金業者は,同項の適用があるとの認識を有しており,かつ,そのような認識を有するに至ったことについてやむを得ないといえる特段の事情があるときでない限り,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定される」とされています。

つまり,貸金業者がみなし弁済が適用されないのに利息制限法所定の制限利率を超える利息を受け取った場合,みなし弁済の適用があると認識しており,しかも,そのように認識したとしてもやむを得ないような特段の事情がない限り,その貸金業者は悪意の受益者と推定されるということです。

したがって,貸金業者を悪意の受益者と推定してもらうためには,以下の要件が必要ということになります。

  • 貸金業者が利息制限法所定の制限利率を超える利息を受け取ったこと
  • その収受について,みなし弁済が成立しないこと
  • 貸金業者がみなし弁済が成立すると認識していたこと
  • そのように認識したとしてもやむを得ない特段の事情があったこと

制限超過部分を受け取っているかどうかは,引き直し計算をすればすぐに分かることです。

また,最二小判平成18年1月13日により,みなし弁済が適用されることはほとんどあり得ないという判断が下されていますから,「みなし弁済が成立しないこと」という要件は,むしろほとんどの場合に満たされることになります。

したがって,悪意の受益者として推定できるかどうかは,3番目と4番目の要件を満たしているかどうかが問題となってきます。

もっとも,貸金業者が,みなし弁済が成立するとは認識していなかったと主張してくることは考えられませんから,結局は,みなし弁済の適用があると認識したとしてもやむを得ない特段の事情があったかどうかが問題となってくることになります。

問題の所在

リボルビング方式の貸付の場合,借入残高に応じて一定の金額が定められ,しかも新たに借入れをするごとに,その金額は変動する可能性があります。

返済金額が変動するということは,返済期間も変動するということです。

そうすると,みなし弁済の成立要件の1つである17条書面の記載事項のうち,返済期間や各回の返済金額をあらかじめ決めておくことは困難です。

そのため,貸金業者は,リボルビング方式の貸付の場合,貸付の際に,17条書面の記載事項である返済期間や各回の返済金額を記載することはできないので,これらを記載しなかったとしても17条書面としては要件を満たしたといえるはずであるし,現に,貸付の当時はそのように考える学説や下級審判例が多数あったのだから,それらを記載しなくても17条書面として要件を満たしていたと考えてもやむを得ないので,それらの記載をしなくてもみなし弁済の適用があると認識していたことについてやむを得ない事情がある,と主張してくることになります。

3つの判例の問題の所在は,まさに,上記貸金業者が主張のように,リボルビング方式の貸付において,貸付の際に返済期間や各回の返済金額を記載していない書面をであっても17条書面として有効なものと考えたとしてもやむを得なかったといえるのか,というところにあるのです。

最高裁判所の判断

3つの判例において,最高裁判所は,以下の判断をしました(以下の判決文は,CFJに対する判決・最一小判平成23年12月1日・平成23年(受)第307号の判決文ですが,他の2つの判例においても,ほとんど同様の判示がなされています。)。

貸金業法17条1項6号及び貸金業法施行規則13条1項1号チが17条書面に返済期間,返済金額等の記載をすることを求めた趣旨・目的は,これらの記載により,借主が自己の債務の状況を認識し,返済計画を立てることを容易にすることにあると解される。リボルビング方式の貸付けがされた場合において,個々の貸付けの時点で,上記の記載に代えて次回の最低返済額及びその返済期日のみが記載された書面が17条書面として交付されても,上記の趣旨・目的が十全に果たされるものではないことは明らかである反面,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をすることは可能であり,かつ,その記載があれば,借主は,個々の借入れの都度,今後,追加借入れをしないで,最低返済額を毎月の返済期日に返済していった場合,いつ残元利金が完済になるのかを把握することができ,完済までの期間の長さ等によって,自己の負担している債務の重さを認識し,漫然と借入れを繰り返すことを避けることができるのであるから,これを記載することが上記の趣旨・目的に沿うものであることは,平成17年判決の言渡し日以前であっても貸金業者において認識し得たというべきである。

そして,平成17年判決が言い渡される前に,下級審の裁判例や学説において,リボルビング方式の貸付けについては,17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用があるとの見解を採用するものが多数を占めていたとはいえないこと,上記の見解が貸金業法の立法に関与した者によって明確に示されていたわけでもないことは,当裁判所に顕著である。

上記事情の下では,監督官庁による通達や事務ガイドラインにおいて,リボルビング方式の貸付けについては,必ずしも貸金業法17条1項各号に掲げる事項全てを17条書面として交付する書面に記載しなくてもよいと理解し得ないではない記載があったとしても,貸金業者が,リボルビング方式の貸付けにつき,17条書面として交付する書面には,次回の最低返済額とその返済期日の記載があれば足り,確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載がなくても貸金業法43条1項の適用が否定されるものではないとの認識を有するに至ったことがやむを得ないということはできない。

そうすると,リボルビング方式の貸付けについて,貸金業者が17条書面として交付する書面に確定的な返済期間,返済金額等の記載に準ずる記載をしない場合は,平成17年判決の言渡し日以前であっても,当該貸金業者が制限超過部分の受領につき貸金業法43条1項の適用があるとの認識を有することに平成19年判決の判示する特段の事情があるということはできず,当該貸金業者は,法律上の原因がないことを知りながら過払金を取得した者,すなわち民法704条の「悪意の受益者」であると推定されるものというべきである。

結論からいえば,3つの判例はいずれも,みなし弁済が適用されると認識したとしてもやむを得ない特段の事情はないから,悪意の受益者として推定されると判断しています。

その理由は,リボルビング方式貸付では,確かに返済期間や各回の返済金額等を書面に記載することはできないものの,次回の最低返済額やその返済期日など返済期間等の記載に準ずる記載をすることは可能であるし,それをしておけば17条書面を求めた法の趣旨に沿うことになるから,そのような返済期間等の記載に準ずる記載すらしなかった以上,17条書面を交付したとはいえず,また,返済期間等の記載がなくても17条書面として成立するという見解も多数を占めていたとはいえないので,みなし弁済が適用されると認識してもやむを得ない特段の事情はない,というところにあります。

要するに,貸付時に交付する書面に,返済期間等の記載に準ずる記載をしていない以上,特段の事情があるとはいえないと判断したというわけです。

3つの判例の違い

前記のとおり,3つの判例はいずれも,特段の事情がないので,貸金業者は悪意の受益者と推定されるという判断をしました。この判断の枠組みに違いはありません。

ただし,個々の事実の認定については,若干の違いがあります。それは,17条書面に返済期間等に準ずる記載をしていなかった時期の認定の点です。

CFJについては平成16年9月まで,プロミスについては平成14年9月まで,アコムについては平成13年10月までは,それぞれ返済期間等の記載に準ずる記載がなかったと認定されています。その点について,3つの判例は違いがあります。

3つの判例の注意点

前記のとおり,3つの判例はそれぞれ,CFJ・プロミス・アコムについて返済期間等の記載に準ずる記載がなかった時期を認定しています。

しかし,これはあくまで当該事件だけに通用するものですので,一般的に,CFJは平成16年9月まで返済期間等の記載に準ずる記載がなかったとか,プロミスは平成14年9月まで返済期間等の記載に準ずる記載がなかったとか,アコムは平成13年10月までは返済期間等の記載に準ずる記載がなかったということはできないでしょう。

どの時点まで返済期間等の記載に準ずる記載がなかったのかは,やはり,個々の事件ごとに明らかにしていかなければなりません。

また,3つの判例はいずれも,それぞれ返済期間等の記載に準ずる記載をしていない時期の間に過払い金が発生し,返済期間等の記載に準ずる記載をするようになってから以降もずっと過払い状態であったという事案の判決です。

つまり,上記各貸金業者が返済期間等の記載に準ずる記載をするようになってから最二小判平成18年1月13日が言い渡された日までの間に過払い金が発生したり,債務残高が発生していたような場合でも,同じようにずっと悪意の受益者といえるのかどうかについては判断がなされていません。

したがって,返済期間等の記載に準ずる記載をするようになってから最二小判平成18年1月13日が言い渡された日までの間に過払い金が発生したり,債務残高が発生していたような場合に,その期間中も貸金業者が悪意の受益者であったと推定できるかどうかは,別途考慮する必要があるでしょう。

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