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自己破産

自己破産における相殺の禁止とは?

自己破産においては,一定の場合,債権者は,破産者に対する債権と破産者が債権者に対して有している反対債権を相殺することが禁止される場合があります。ここでは,この相殺の禁止について,東京 多摩 立川の弁護士がご説明いたします。

相殺の担保的機能

相殺は,ある2人が同種の目的を有する債務を相互に負担している場合に,その対当額でお互いに負担を免れるために行われます。

たとえば,AさんはBさんに対して100万円の債務を負担しており,他方,BさんはAさんに対して100万円の債務を負担していたとします。

この場合,Aさんが相殺の意思表示をすれば,Aさんは100万円の負担を免れることができますし,他方,これによってBさんも100万円の負担を免れることができます。

100万円の債務を,100万円の債権で打ち消したというようなイメージです。

相殺は,上記のとおり,自分が相手方に対して有している債権も失うことになりますが,実際に金銭を支払わずに失った債権と対当額の債務をなくすことができます。

債務の負担をなくすことができるということは,その分マイナスをなくすことができるということですから,総資産からみれば,相殺金額と同額の債権を回収したのと同等の効果を持っているということもいえるでしょう。

つまり,相殺には,相手方が支払えなくなった場合に,相殺をすることによって,優先的に自分の負債を減らすことができるという意味で,担保的な機能があると言われています。 

>> 相殺とは?

相殺の取扱いの原則

【破産法 第67条】
破産債権者は,破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは,破産手続によらないで,相殺をすることができる。

債務者が支払いをできなくなるという状態の最たるものが,破産の場合です。したがって,債務者が破産したときこそ,相殺の担保的機能がもっとも活かされる場面だと言えるでしょう。

たとえば,上記の事例で,AさんもBさんも支払いをしないまま,Bさんが自己破産したという場合を考えてみます。

この場合,相殺が認められないと,Aさんの貸金債権は破産債権となり,破産手続の配当によってしか債権の回収ができないことになります。

したがって,もし配当すべき金銭がなければ,Aさんの債権は全然回収されないことになるということです。

他方,BさんのAさんに対する売掛債権は破産財団に組み入れられるので,破産管財人はAさんに対して,すぐに100万円を支払ってほしいと請求することになります。

そして,この100万円は破産債権者全員に公平に配当されることになります。

この結論は,Aさんからするとひどく不公平です。そのため,Aさんとしては,少なくとも,相殺をして,自分が破産管財人に支払いをすることだけは免れたいところでしょう。

このような場合があるため,破産法では,相殺の担保的機能を尊重して,破産債権を自働債権とし,破産債権者が破産者に対して負担している債務を受働債権とする相殺を原則として認めているのです。

相殺が禁止される場合

前記のとおり,自己破産においても相殺の担保的機能は尊重されるべきです。しかし,常に相殺が認められるとすることにも問題があります。

破産手続では,債権者の平等・公平が実現されなければなりません。

したがって,各債権者は,個別に破産者から優先的に支払いを受けることはできず,破産手続によって債権額に応じて公平な配当を受けることになります。

ところが,破産者に対する相殺が認められてしまうと,その相殺をした債権者だけが,(自己の債務の負担を免れるという利益を得るという意味で)優先的に債権を満足させることができるようになってしまいます。

これは,破産債権者間の平等・公平を害することになるおそれがあります。

とはいえ,上記のとおり,相殺の担保的機能に対する債権者の期待を,完全に否定するということは,その相殺権を有する債権者の期待を裏切ってしまうことになってしまいます。

そこで,破産手続においては,債権者間の公平を図るために相殺を禁止する必要があるとしても,相殺の担保的機能を考慮して,相殺が禁止されるのは,債権者間の公平を害するような一定の場合に限定されています。

具体的には,以下の場合に相殺が禁止されることになります。

  • 破産者の破産債権者に対する債権を自働債権とし,破産債権を受働債権とする相殺
  • 破産債権を自働債権とし,破産財団に属しない債権を受働債権とする相殺

また,破産債権を自働債権とし,破産債権者の破産者に対する債権を受働債権とする相殺であっても,受働債権の取得時期や自働債権の取得時期によっては,相殺が禁止される場合があります。

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